塩の研究 1「塩の種類や製法を知る」

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塩の研究 6

まずは集めてみました。塩、塩、塩・・・!

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塩の研究にあたり、最初にいろいろな塩を集めてみました。食ラボ研究員たちが普段使っている塩を持ち寄ったり、新たにスーパーや百貨店で購入したり、ネットで取り寄せたり・・・。中には研究員たちが国内外へ旅行した際に旅先で購入してきた珍しい塩や、友人の旅土産の塩も含まれています。そうやって集めた塩は、ざっと数えてみただけでも70種以上!それでもこれらは日本や世界各地の塩のほんの一部。まだまだ知らない塩もたくさんあります。

この塩はどんな塩?どうやって作るの?

大きく分けると、塩には海塩岩塩があります。

海塩は、海水から作った塩のことですが、その作り方は実にさまざまです。海外に多いのが、海水を塩田に引き込み、半年~2年かけて天日(太陽と風)だけで水分を蒸発させて濃縮し、結晶化した塩を採取するもので、雨量や湿度がきわめて低く、広大な大地のあるところでは、ほとんどがこの方法で塩作りをしています。ただ、日本のように降水量が多く、しかも広大な塩田を作りにくいところでは、もっぱら海水を濃縮して濃度の高い塩水にし、それを釜などで煮詰めて塩を作る方法が多くなります(海水を濃縮する方法や、それを煮詰める方法はさまざまあります)。

岩塩は、太古の時代に海だったところが地殻変動などによって地中に埋まり、海水の塩分が結晶化し、長い間に地層となったものです。もとをたどれば、岩塩も海水だったわけですが、岩塩層を含む鉱山や地中を採掘して掘り出したり、先に岩塩を溶かしてからくみ上げたり、あるいは塩湖などから結晶した塩を切り出したりします。ちなみに、世界中の塩の約6割は岩塩ですが、日本には岩塩層がなく、岩塩はとれません。

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塩の分け方はほかにもいくつかあります。原材料別では海塩(天日塩など)、海水、岩塩、湖塩の4つに分けられ、製法別では天日蒸発、煮詰め、岩塩採掘、全蒸発などに分けられます。

塩の種類や製法は、以下のサイトや文献にさらに詳しく紹介されています。

「世界の塩・日本の塩」(たばこと塩の博物館 www.jti.co.jp
「塩のちから」尾方昇著(素朴社)
「塩入門」尾方昇著(日本食糧新聞社)

塩の袋をチェック。表面より裏面に注目!

salt1_3改めて塩の袋(あるいは箱)を見ると、いろいろなことが書かれているのに気づきます。袋の表面には、塩の名前をはじめ、イメージ写真やイラスト、キャッチコピーなどがのっています。
塩を選ぶ際、つい表面だけ見て決めてしまいがちですが、むしろしっかり見て、チェックしたいのは裏面のほう。その塩に関する情報がよりくわしくのっているからです。製造者の名前や住所、塩の説明や特徴、「製造表示」や「栄養成分表示」などの表もあり、裏面はさながら“塩の履歴書”。その塩の生まれ育ちや、作り手の塩に対する思いやこだわり・・・なども書かれています。


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塩を知るために、知っておきたいこと

塩のことを知るために、履歴書の中から読み取りたいのが、塩の原材料と工程、成分をのせた「製造表示(原材料名、工程)」や「栄養成分表示」 です。
製造表示(原材料名・工程)からは、塩の原材料名と、塩を作ったときの工程がわかります。

この表示の見方は、慣れれば意外にカンタン。たとえば①の場合なら、沖縄県粟国島の海水をくみ上げ、天日(太陽熱のこと)だけで濃縮、結晶させ、乾燥させたもの。②は沖縄県石垣島の海水をくみ上げ、平釜で煮詰めて濃縮、結晶させ、乾燥させたもの。③になると、オーストラリアの海水をくみ上げ、先に現地において天日で濃縮、結晶化させてから日本に運び、これを海水で溶かし、にがり成分を添加したのち、再結晶させたもの(このような塩は再生結晶塩と呼ばれます)。④は、天然に存在する岩塩を採掘し、粉砕したもの、ということがわかります。そして⑤になると、海水(くみ上げる場所の表示なし)をイオン交換膜という製法で、工業的にN aC lだけ濃縮。それを立釜で煮詰めて精製、結晶化し、乾燥させたものということがわかります。

栄養成分表示とは、塩の作り手が各地にある食品分析センターなどに依頼して、塩の成分分析を行い、その分析結果を表示しているものです。先の「製造表示(原材料名、工程)」は“義務表示”といって、パッケージに必ず表示しなくてはならないものですが、「栄養成分表示」は任意の表示なので、掲載されていない塩もたくさんあります。日本の塩にも表示のない塩がありますし、海外から輸入している岩塩や海外のお土産の塩などには、表示のまったくないものも多いですが、消費者としては少々心配です。できるだけ成分表示をのせて販売してほしいものです。

表示からわかってくることがある

せっかく栄養成分表示があっても、見方がわからなければ役に立たないので、基本だけでも知っておくと便利です。たとえば②の表示には、製品100g中のナトリウム量、カルシウム量、カリウム量、マグネシウム量・・・・等が並んで記載されています。このうち、まずどんな塩かを見るときに注目したいのがナトリウム。これがいわゆる塩のしょっぱみにあたり、塩が塩である部分ですが、ここで注意したいのは、表示されているナトリウムの分量が、そのまま塩分量(塩分相当量)ではないこと。塩の主成分は塩化ナトリウム(N aC l)で、これはナトリウム(N a)量に2.54倍したものにあたります(①のように、成分表示によっては、両方の数値が表示されている場合もあります)。つまり、②の塩の場合、ナトリウム量は100g中35gなので、35☓2.54=88.9gで、これが塩化ナトリウムの量となり、この塩の塩分量(塩分相当量)になります。

また、よくいわれる“にがり”にあたる成分は、主にマグネシウムですが、ほかにもカリウム、カルシウム、あるいは鉄や硫黄、炭水化物…等もこれにあたります。つまり、成分表示表にナトリウム以外の成分の含量がそれぞれ記載されていれば、その塩は“にがり”分を含んだ塩といえます。一方、昔からおなじみの「食塩」のように、もともとは海水が原材料であっても、イオン交換膜と呼ばれる製法で工業的に作った塩は、高純度に精製されているので、大部分がナトリウムで占められており(たとえば「食塩」は99%以上がナトリウム)、にがりにあたるマグネシウムやカルシウム、カリウムなどの成分はほとんど含まれていないことがわかります。

塩袋裏面(海外塩 成分表示なし例)

塩袋裏面(海外塩 成分表示なし例)

塩袋裏面(国内塩 成分表示なし例)

塩袋裏面(国内塩 成分表示なし例)