砂糖の研究

『身近な調味料をもっとよく知り、おいしく使おう!』

もともと「食のラボラトリー」は、普段からおなじみの食材や調味料をもっとよく知り、おいしい使い方を研究しようという思いから始まりました。そしてその第1弾が“塩の研究会”。塩そのものの味を比較したリ、調理してみると、新しい発見がいっぱいありました。そこで、今年は塩に続いて、さまざまな調味料を研究することにしました。

1.砂糖の研究
まずは、おなじみの砂糖である上白糖から始まり、グラニュー糖、三温糖、粉糖のほか、和三盆、黒砂糖、きび砂糖、花見糖、てんさい糖…など、
砂糖の種類や製法、それぞれの特徴について、資料をもとにみんなで勉強しました。

砂糖集合

 

 

 

 

 

 

次に、ちょっと珍しい砂糖を5種選び、目視で比べたのち、少量を水に溶かしそれぞれ味見してみました。

砂糖集合2

 

 

 

 

 

 

1.ビートグラニュー糖
北海道産のビート(てんさい)だけで作ったグラニュー糖。

2.阿波和三盆糖
竹糖と呼ばれる、徳島の在来品種のさとうきびから作り出した結晶を繰り返し何度も“研ぎ”、粒子をどこまでも細かくしたもの。干菓子でも有名。

3.カソナード
フランス産の厳選した上質のさとうきびから作ったブラウンシュガー。
未精製のため、自然のミネラル豊富。クレーム・ブリュレの仕上げにかけ、キャラメリゼする砂糖としておなじみ。

4.黒糖
有機JAS認定。ブラジル産の有機黒糖のみを使用したもの。
さとうきびの収穫もすべて手作業で、青い幹のまま行うという。

5.ビート黒糖
さとうきびではなく、てんさいから作った珍しい黒糖。  

食ラボメンバーによる、味見の感想は・・・・、
1.通常のグラニュー糖より、さらにあっさりして、さっぱりしている。やわらかくマイルドな味わい。
普通のグラニュー糖より、舌に残らない。

2.粉糖を食べると舌でスッと溶け、口どけも味も実に上品。和三盆ならではの独時の味わいだが、水に溶かすと差がなくなってしまい、香ばしい風味はあるものの、ごく普通の砂糖水に。和三盆はそのまま食べるほうがいい。

3.そのままで食べても、水溶液にしても、味わい深くておいしい。香りがある。

4.黒砂糖のわりにはさらっとしている。くどさがなく、さっぱりしている。洗練された黒砂糖。

5.非常に個性的な味わい。しょうゆのような風味が感じられ、多少しょっぱみもあるような気がする。

この結果、砂糖の味は原材料の種類によって違うだけでなく、粒の大きさによっても、味の印象がかなり変わることがわかりました。たとえば、和三盆糖の場合は結晶化させたものを何度も研ぎ、粒子をどこまでも細かくしたからこそ、あの口溶けや上品な味わいにつながっているようです。一方、クレ-ム・ブリュレなどに使用するカソナードの場合は、粒が大きめだからこそ、キャラメリゼしたあとの舌に残るざらっとした感触が、おいしさにもつながる気がします。

では、実際の料理ではどう違いが出るのでしょうか。「里芋の煮もの」を作り、比較してみることにしました。
里芋400g(正味300g)とだし汁11/2カップは共通にし、同条件になるよう、上白糖の量を基本に、他の砂糖やみりんの量を換算。下記の1~5の糖分で甘みをつけました。
それ以外に、砂糖とみりんを両方使わずに、砂糖だけ、みりんだけでも煮てみました。
また、今回は甘みの違いがわかりやすいよう、糖分は通常より少々多めに用い、しょうゆや酒はまったく使わずに煮て、色、つや、照り、甘さ、味の違い…などを比べました。

いも煮出し

 

 

 

 

 

 

※上白糖 大さじ1(約9g)=グラニュー糖 大さじ1弱(上白糖の98%)=みりん 大さじ3
1.里芋400g、だし汁11/2カップ、上白糖大さじ2、みりん大さじ2
2.里芋400g、だし汁11/2カップ、グラニュー糖大さじ2弱、みりん大さじ2
3.里芋400g、だし汁11/2カップ、花見糖(きび砂糖)大さじ2、みりん大さじ2
4.里芋400g、だし汁11/2カップ、砂糖大さじ2+2/3
5.里芋400g、だし汁11/2カップ、みりん大さじ8
その結果は・・・、メンバーの想像以上に味の違いがはっきり出ました。

煮物できあがり

 

 

 

 

 

 

まず、しょうゆを使わずに上白糖とみりんで煮た里芋は、やはり普段よりかなり甘めの仕上がりになりました。これはわかっていたことですが、上白糖の替わりにグラニュー糖で煮た里芋はというと、こちらは妙にあっさりし過ぎて甘みが足りず、物足りなさを感じました。また、上白糖の替わりに花見糖というきび砂糖を使って煮たものは、「ほどよくあっさりした甘さ」「うす茶色をした砂糖だが、ブラウンシュガーや黒糖のクセはなく、上品」・・・といった感想も多く、この中では一番好評でした。

一般に、ケーキや焼き菓子などにはグラニュー糖を使用しますが、里芋の煮もののような日本料理には、上白糖やきび砂糖などを使う方がよさそうです。
グラニュー糖で上白糖と同じ甘さにするためには、その分、量を増やさなくてはならないため、その分、カロリーも上がってしまうものと思われます。

次に、みりんを使わず、砂糖だけで煮た里芋の味はというと、甘さは十分あるのに、不思議なほど芋の味にうまみがなく、だしの風味も感じられませんでした。
一方、砂糖を使わず、みりんだけで煮た里芋は、色つやもよく、照りも申し分なく、見かけは一番おいしそうに煮上がりました。ところが、実際に食べてみると「甘さが足りず、うまみもだしの風味も感じられない」という感想が集まりました。みりんの性質には素材の繊維をしめ、硬くする性質があるため、甘みやだしの風味が里芋の中にうまく入っていかなかったのかもしれません。最近は砂糖を嫌い、砂糖の代わりにみりんの甘みだけで煮ものを作る人もいるそうですが、今回の結果を見る限り、みりんだけでおいしい煮ものができるとは思えませんでした。しかもみりんは意外にも高カロリー。
1~4の総カロリー数は約270~290kcalですが、みりんだけを使った5の場合は350 kcal にはね上がります。甘みが十分でないからとさらにみりんを足せば、いっそう高カロリーになることもわかりました。

昔から、本来の甘みをつけるのは砂糖。みりんは、砂糖とともに用い、“隠し味として照りやつやを出し、うまみやコクを出す”。そういわれてきましたが、今回のように比較調理してみると、実際にそのことがよくわかった気がします。

次回は、「みりんの研究」。“みりん”のことを学び、もっとよく知ったうえで、みりんの使い方や料理についても研究してみたいと思います。