だしの研究3

『身近な調味料をもっとよく知り、おいしく使おう!』

「食のラボラトリー」は、普段からおなじみの食材や調味料をもっとよく知り、おいしい使い方を研究しようという思いから始まりました。その第1弾が“塩の研究会”。
塩そのものの味を比較したリ、調理してみると、新しい発見がいっぱいありました。
そこで、今年は塩に続き、さまざまな調味料を研究することにし、砂糖、みりん、甘味料、料理酒、酢などの身近な調味料を改めて見直し、比較研究をしてきました。
そして、昨年11月からは「だし」をとりあげています。

7.だしの研究③
「だし」の研究の3回目。1回目、2回目は、かつお節や昆布など、単体のだしの味比較をしてきましたが、今回のテーマは「合わせだし」です。
かつお節と昆布を合わせ、その味を比較してみることにしました。

「だし」の研究の2回目。先月の「かつおだし」に続き、今月は「昆布だし」をとりあげることにしました。

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◉「うまみ」と、うまみ成分
だしのおいしさなどに代表される「うまみ(旨味)」は、甘味や塩味、酸味、苦味などと並ぶ、
“第5の味”。その「うまみ」の成分は、食材によって異なる成分ということがわかっています。
うまみ成分には、アミノ酸系と核酸系があります。その代表的なものは、アミノ酸系がグルタミン酸。
昆布をはじめ、野菜(トマト、玉ねぎ、にんじん・・他)にも多く含まれています。また、核酸系はイノシン酸とグアニル酸。
かつお節や煮干しなどには、乾燥させた魚に凝縮されたイノシン酸がたっぷり。
牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類に含まれているのもイノシン酸です。そして、干ししいたけやきのこ類に多いのがグアニル酸です。

◉うまみ成分の相乗効果が働く「合わせだし」
「うまみ」は、異なるうま味成分を組み合わせることで、相乗効果が働くことがわかっています。
これについては、以前から“日本人の知恵”としてはわかっていましたが、根拠や詳しいメカニズムについてはずっと謎のままでした。
それを分子レベルで解明したのはアメリカの研究グループで、今では科学的にも証明されています。
たとえば、グルタミン酸とイノシン酸、あるいはグアニル酸と組み合わせることで、単純に1+1=2ではなく、1+1=7~8。掛け合わせによって、うまみはなんと7~8倍にも飛躍的に上がるといいます。
今月のテーマでもある合わせだしは、昆布のグルタミン酸と、かつおぶしや煮干しのイノシン酸を合わせることが多いですが、まさにうまみの相乗効果を期待できる組み合わせということがわかりますね。

◉うまみ成分の発見者は日本人
ところで、そのうまみ成分を発見したのは、日本人研究者池田菊苗です。ドイツで最先端の化学を学び、
帰国後は理論化学を大学で教えながらさまざまな研究を続けていましたが、たまたま妻の買ってきた昆布を見て、その成分の研究を思い立ったといわれています。
何度も失敗を重ね、そして1908(明治41)年、ようやく発見したのが昆布のうまみ成分である「グルタミン酸ナトリウム」でした。
そしてその後、この成分は企業によって商品化され、みんなが知るうまみ調味料として一般家庭に広く浸透していったのです。
うまみ調味料については、その手軽さから家庭で使う人も多いと思います。味については、好き嫌いも含め賛否両論ありますが、この成分が発見された時や、商品化された当時は、日本中が驚き、称賛したことでしょう。
また、この発見がもとで、「うまみ」が第5の味覚として、世界に知られるものになりました。

<合わせだしの比較>
◎今回は、合わせだし4種(昆布違い)と合わせだしの素(パックや顆粒)6種、計10種を味比べしました(先入観をもたないよう、ブラインドで行いました)。

<合わせだし>
①船泊 利尻昆布 (天然)一等検 2,700円/100g

②羅臼昆布(えながおにこんぶ)(天然)一等検 1,904円/100g

③真昆布 尾札部白口浜元揃 (天然)一等検 1,566円/100g 

④冬島 日高昆布(天然)一等検 1,260円/100g

<合わせだしの素>

⑤ヤマキ 鰹節屋のだしパック 8袋入り368円

⑥OFJ基本だしかつお 12本入り477円

⑦築地伏高 だしパック 20袋入り1,728円

⑧茅乃舎 極みだし 5袋入り648円

⑨リケン素材力だし本かつお 7本入り196円

⑩AJINOMOTO ほんだし 7本入り170円

◉この方法でだしをとりました。

<合わせだし>
材料:水各1.2リットル、昆布各15㎝角1枚、削り節30g
1、乾いた布巾で昆布の表面の汚れをとり、4つの鍋にそれぞれ分量の水と昆布を入れ、30分以上つけておく。
2、鍋を中火弱でゆっくり熱し、沸騰寸前に昆布を引き上げ、沸騰したら削り節を加え、箸でサッと押さえて鍋の中に沈めたら、火を止める。

かつお節をいれる

 

 

 

 

 

 

出汁比べ②

 

 

 

 

 

 

<合わせだしの素、だしパック>
だしの素は袋に記載されている量の熱湯で溶かし、だしパックの場合は、表示されている量の水で、表示時間煮出した。

出汁比べ1

 

 

 

 

 

 

◉食ラボメンバーによる味の感想は・・・
①淡いが、上品でやさしい味。まろやかでいやみがない。香りがふわっと鼻に抜ける。香ばしさと、多少酸味を感じる。香りからも酸味を感じる。

②やわらかい甘み。しっかりとした味。先にかつおの風味を感じ、後からじわっと昆布を感じる。香りにも香ばしさと甘みがある。味に奥行きがある。

③さっぱりとした上品な味。香りはやわらかい。酸味を感じる。4つの中ではかつおの風味を一番感じる。後味にかつおを感じる。少々塩気も感じる。

④最初に少々酸味を感じ、甘味も感じる。あとからやわらかい味に。バランスがいい印象。バランスよく、おいしい。かつおの風味がしっかり出る。

⑤味や香りがうすく、うまみが感じられない。さらっとし過ぎて水っぽい。化学的な風味を感じる。

⑥ほのかに酸味があり、昆布の風味を感じる。しょっぱいがバランスはよい。少々魚くささ(生ぐささ)を感じた。最後まで溶け残るのが気になる。

⑦味は薄めだが上品。酸味をほのかに感じる。磯っぽく意外にかつお風味が強め。多少、雑味も感じる。

⑧味も甘みも濃いが、なんか不自然。いかにもというような(できあがっちゃってる)味や香り。化学的な風味も感じる。コンソメの素が入っているような味。

⑨味も香りも浅く水っぽい。塩気はきつくない。薄めだが、ここから味つけするならじゃまにならない。

⑩塩味が強め。昆布もかつおの味も出ているが、作られたような風味。変わった味。うまみは感じられないが、うまみ調味料のような味。

“だしの研究”の3回目。かつおぶしや昆布を単体で比較した2回に続き、今回は「合わせだし」の
比較でした。味の相乗効果を期待して、削り節の量は前々回(かつおだしの回)よりぐっと少なく
2.5%にしてみましたが、それでも味や風味は十分出ていました。
一流店といわれる日本料理店でだしをひく際、1回に使う削り節の量は5%ともいわれていますが、
これは一般家庭ではさすがに使えない量です。
その意味でも、やはり「合わせだし」は強い味方といえるでしょう。一方、だしの素やだしパックも、
手軽に使えるところは忙しい人の味方。
「合わせだし」の素はさまざまな種類が出ていますが、今回はその中から6種を比較してみました。
“化学調味料無添加”という表示のものを中心に選びましたが、無添加表示のものでも“酵母エキス”は入っています。
それらがまったく入っていないのは⑦のだしパックだけでした。
味の感じ方は人それぞれですが、自然の昆布やかつお節でとった「合わせだし」と比べてしまうと、
評価はどうしても辛口になってしまいます。
そして何よりも、ふわっと立ちのぼり幸せな気分になるだしの”香り“。
それがまったく感じられないのはやはり寂しいなと思いました。

◉合わせだしを使った料理を作り、みんなでいただきました。

茶碗蒸し像

みそ汁

煮浸し