だしの研究2

『身近な調味料をもっとよく知り、おいしく使おう!』

「食のラボラトリー」は、普段からおなじみの食材や調味料をもっとよく知り、おいしい使い方を研究しようという思いから始まりました。その第1弾が“塩の研究会”。
塩そのものの味を比較したリ、調理してみると、新しい発見がいっぱいありました。
そこで、今年は塩に続き、さまざまな調味料を研究することにし、砂糖、みりん、甘味料、料理酒などの身近な調味料を改めて見直し、比較研究をしてきました。
そして、先月(11月)からは「だし」をとりあげています。

7.だしの研究②
「だし」の研究の2回目。先月の「かつおだし」に続き、今月は「昆布だし」をとりあげることにしました。
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◉昆布は成長するまで2年かかる
昆布は深さ 5~7m の海中で光合成を行い、成長します。2 年かかって一人前の成昆布となり、長さは2~10m、幅は60cm以上になるものもあります。
昆布は1年目に成長を続けたあといったん枯れてしまい、残った根元から再び成長を始め、1年目より大きく、厚く、味のいい昆布に育ちます。
この2年目の昆布を食用にします。
一方で、近年は昆布の養殖も増えています。養殖昆布は、栄養塩基類に入ったプールに1年ほどつけ、
幼体の成長を早めてから苗をロープに着床させ、海に放ち昆布を成長させます。
天然昆布の成長期間と同様に2年かけて養殖したものと、1年で出荷する促成昆布があります。

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◉天然昆布と養殖昆布、どこが違うの?
海中の岩礁に自然に着生し、そこからのびて大きくなるのが天然昆布。反対に、苗をロープに着床させて吊るし、海底に向かってのびていくのが養殖昆布です。
養殖昆布でも、2年物になると見かけは天然昆布より厚く大きくなるものもあります。養殖昆布は、天然昆布と比べるとグルタミン酸の量が少なく、
うま味やだしの出かたは違うといわれています。

◉昆布の格付けはどう決められているの?
昆布は生育する浜(浜格差)と等級により格付けされています。
浜格差は、生育する浜が昆布にとって良い環境が整っているほうが
昆布の発育状況も良いからあるそうで、長い経験から決められているのだとか。
例えば日高昆布の生育地区は特上浜、上浜、中浜、並浜の4ランクに分けられており、価格にも反映されます。
また、等級は北海道水産物検査協会の検査により一等から五等に格付けされています。
同じ産地の同じ種類の昆布でも、成育度合いによって葉の大きさや厚さ、表面に傷のあるなし、
色目の黒いもの浅いものがあり、選別結果が等級によって表されます。葉の幅が広く、
肉厚のものは「一等」や「二等」に、多少短いものや細いものは「三等」や「四等」になります。
ほかにも「加工用」や「傷」といった規格もあり、とろろ昆布や佃煮などの加工用に使用されています。
等級の低いものが必ずしも味が劣るとは言いきれないものの、同じ産地で比べた場合、
等級が上の昆布(大きく、肉厚のもの)の方がだしの出がよく、うま味も強いといわれているそうです。

<昆布の産地と種類>
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※上記の図は、北海道ぎょれんの HP よりお借りしました。www.gyoren.or.jp/konbu
※昆布の特長は、築地 「伏高 」の HP を参考にさせていただきました。www.fushitaka.com

◉真昆布(まこんぶ)
ほんのり甘く上品なだしがとれる、極上の真昆布
道南の函館から恵山岬、噴火湾沿岸に生育している昆布で「山だし昆布」とも呼ばれます。
くせのない上品な甘みの清澄なだしがとれ、噛めば噛むほど甘みが出る昆布です。だしをとるための昆布として関西(特に大阪)でよく使われおり、
おぼろ昆布、とろろこんぶ、塩昆布に加工もされています。採取される場所により、
「白口浜(しろくちはま)」 「黒口浜(くろくちはま)」「本場折(ほんばおり)」「場違折(ばちがいおり)」 の4種類に区別されています。
中でも白口浜は昆布の生育に最適な環境といわれ、品質的、価格的にも白口浜、黒口浜、本場折の順で、場違折は主に加工用に使われています。

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◉利尻昆布(りしりこんぶ)
香りの良い透明なだしがとれる、京料理に欠かせない昆布
礼文島、利尻島、稚内沿岸に生育している昆布です。
真昆布と同様、くせのない上品で清澄なだしがとれますが、真昆布より幾分塩味がかっています。
京都で最も支持されている昆布で、だしをとるだけでなく、千枚漬にも使われています。礼文島産の利尻昆布は最も香り
が良いとされ、稚内産の利尻昆布は若干だしに色がつくことがあるので、品質的、価格的には礼文島、利尻島、稚内の順になります。

◉羅臼昆布(らうすこんぶ)
味が濃く、香り高いだしがとれる昆布の王様
知床半島、羅臼町沿岸に生育している昆布で、正式には「利尻系えながおにこんぶ」と呼ばれています。
昆布の王様と呼ばれるほど味は濃く、香りが高いだしが出ますが、だし汁は黄色みがかっています。
色がつく点や、味が濃すぎるという点で敬遠する方もいます。
「黒口」、「赤口」、「シマ」の3種類に区別され、黒口は昆布の色が黒く、赤口は赤褐色、シマは葉の中央部分に縞が入っているように見える昆布です。
黒口の方が赤口よりも価格は高く、シマ昆布は品質が落ちるので価格は安くなります。

◉日高昆布(ひだかこんぶ)
身が柔らかく、煮物にすると美味しい昆布
日高沿岸を中心に生育している昆布です。昆布の種類としては「三石昆布」と呼ばれています。
関東以北では「だし用の昆布」として使用されますが、真昆布、羅臼昆布、利尻昆布に比べ、だしの甘みが少ない昆布です。
繊維質が柔らかく煮上がりが早いので、昆布巻、佃煮等の煮て食べる昆布にも適しています。
日高昆布は生育する浜により浜格差があり、特上浜、上浜、中浜、並浜にランク付けされています。
同じ一等の日高昆布でも、特上浜の一等の方が並浜の一等よりも昆布の幅が広く、身は厚く、うま味成分が多くなります。

◉長昆布(ながこんぶ)
釧路から根室沿岸に生育している昆布です。その名のとおり、全長が6メートルから15メートル程もある昆布です。
最も生産量が多い昆布で、昆布巻、佃煮、おでん昆布等、煮て食べる昆布として使用されています。

◉厚葉昆布(あつばこんぶ)
長昆布よりも沖の深い場所に生育している昆布です。長昆布同様、昆布巻、佃煮、おでん昆布等、煮て食べる昆布として使用されています。

<昆布だしの比較>
◉今回は、昆布5種と昆布だしの素(顆粒)2種、計7種を味比べしました(先入観をもたないよう、ブラインドで行いました)。

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①ヤマナカ 日高切出し昆布 419円/60g
②冬島 日高昆布(天然)一等検 1,260円/100g
③真昆布 尾札部白口浜元揃 (天然)一等検 1,566円/100g
④羅臼昆布(えながおにこんぶ)(天然)一等検 1,904円/100g
⑤船泊 利尻昆布 (天然)一等検 2,700円/100g
⑥リケン 素材力だし(こんぶだしの素) 7本入り 212円
⑦シマヤ こんぶだしの素 7本入り 149円

※167はスーパーで購入、2~5は築地「伏高」で購入

◉この方法でだしをとりました。
材料:水各 500ml、昆布各 10g(昆布は水の 20%量で統一)
1.乾いた布巾で昆布の表面の汚れをとり、5つの鍋にそれぞれ分量の水と昆布を入れ、30分以上つけておく。
2.鍋を中火弱であゆっくり熱し、沸騰寸前に昆布を引き上げる。
※だしの素は袋に記載されている量の熱湯に入れて溶かしました。

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◉食ラボメンバーによる味の感想は・・・
①色は薄い。あっさりして塩気も風味も少ない。あまり昆布の味がしない。
②色は黄色がかって濃いめ。昆布のうまみを感じる。味もうまみも濃い。
③色はあっさりしている。海の味がして、いかにも昆布という味。昆布の風味が強い。他よりぬめりやとろみがある。
④昆布の風味がしっかり出ている。さらりとしているが、奥深い甘みがある。まろやかな味わい。バランスがよい。
⑤色は薄め。味は上品であっさり。後味がとてもいい。昆布くささがない。塩気を少々感じる。
⑥昆布の味がせず、ちょっと変わった味。酸味を感じる。
⑦昆布の味がしない。塩気が強い。味が濃く、しょっぱい。動物性?のような、違う味を感じてしまう。

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ちなみに、「伏高」さんの HP に今回購入した2~5の昆布の説明がありましたので、それも参考までに以下に掲載させていただきます。
なお、今回の昆布はどれも27年度産の“ヒネもの”。天然の昆布は、新物だとまだ繊維が硬く、だしが出にくいため、わざわざ1年寝かせたものを翌年販売しているそうです。

②冬島 日高昆布 一等検
一般に日高昆布は柔らかくなりやすいため、昆布巻きなどに用いたり、煮て食べることも多いですが、
“上浜”の冬島に着生した昆布は群を抜いて生育状態が良く、良質のだしもとることができます。

③真昆布 尾札部白口浜元揃 一等検
道南の噴火湾南側、尾札部産の最上級の真昆布。例年、関西の特定業者の手に渡り、一般市場ではほとんど手に入らない希少な昆布です。
上品な甘みをもつ、清澄なだしがとれます。かめばかむほど味がでてくる昆布。

④羅臼昆布(えながおにこんぶ)一等検
知床半島の南側、羅臼町産の昆布。昆布の王様と呼ばれるほど、味は濃く、香りの高い、黄色みのかっただしが出ます。
繊維質は比較的少なく、柔らかくなりやすいので、だしをとった後もおいしい佃煮が作れます。

⑤船泊 利尻昆布 一等検
礼文島北部、船泊産の昆布。道南産の真昆布に比べやや固いこの昆布からは、上品で香りの良い清澄なだしがとれます。
京料理にはかかせない昆布。

◉昆布だしを使った料理を作り、みんなでいただきました。
<ささっと聞き書きレシピ>

豚スペアリブと大根のスープ煮
(製作 :飯塚さん、作り方協力 :久保田さん)

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材料:豚スペアリブ、大根、昆布、しょうが、青ねぎ、塩
●作り方
1.ひたひたの湯で肉をゆで、ゆで湯を捨て、肉を洗ってアクや汚れをとり、鍋も洗う。
2.鍋に水、昆布、しょうがと、1の肉を入れ、火にかける。沸騰したらアクと脂をとり、弱火にして煮る。大根は別にゆでておく。
3.30分ほど煮たら大根も加え、さらに 30 分ほど煮て、塩で調味する。器に盛り、青ねぎをふる。

簡単昆布巻き
(製作:牧野さん)

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材料:豚バラ肉(しゃぶしゃぶ用)、だしをとったあとの昆布、 ※肉は牛肉でもよい。
●作り方
1.昆布の上に肉を並べてのせ、手前から巻いていき、楊枝でとめる。

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2.鍋に1を入れ、ひたひたの水、しょうゆ、みりんを加え、落としぶたをして
汁けが少なくなくなるまで煮る。

むかごと菜花の炊き込みご飯
(製作:長島さん)
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材料:米、むかご、菜花、昆布、塩 ※むかごはよく洗い、皮ごと使う。
※昆布は水出ししておく。

作り方
1.といだ米、むかごを炊飯器に入れる。目盛り通りに昆布だしを入れ、塩少々加え、昆布をのせて炊く。菜花はサッとゆでておく。

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2.小鍋に昆布だし少々を温め、みりん、しょうゆ、ゆでた菜花を加えて味をつけ、炊き上がったご飯に加えて混ぜ合わせる。

以上、“だしの研究”の 2 回目。先月の「かつおぶし」に続き、今回もあえて「昆布だし」だけで風味や味を比較してみました。
普段、さまざまな種類の昆布でだしをとり、飲んで比較する機会はなかなかないため、みな興味しんしんで取り組みました。
そして、予想はしていましたが、産地や種類が違えば、こんなに風味や味も違うのかと驚きました。
どの昆布もそれぞれいい味を出していて、「昆布だしって、飲んでいて飽きない」「飲むだけで癒される」といった感想も聞かれました。

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というわけなので、どの昆布が一番かを問うのは愚問という気も・・・。人によって好みもあれば、どんな料理に合わせるかでも選び方は違ってくると思うからです。
また、一般家庭で日常的に使う場合、やはり価格も大いに気になります。今回試した4種類の一等検天然昆布は、各産地の最上級品ばかり。
どの昆布も想像以上にすばらしい味でしたが、中には普段使いするのはちょっと・・・とためらうお値段のものもありました。

一方、だしの素は手軽で便利だとは思いますが、こうやって比べてしまうと、先入観抜きであっても本物の昆布の風味や味にはほど遠い、
というのが正直なところ。昆布だしは、今回のように30分くらい前から昆布を水につけておき、それを温めていくだしのとりかたのほか、
日本料理のプロや昆布を扱うお店で推奨しているのが「水だし」。昆布を水に入れ、一晩つけておくだけで非常にいいだしが出るため、
手間いらずで簡単。ぜひためしてみてください。