「残したい!伝えたい!日本の味!我が家の味!」⑪

『残したい、伝えたい、日本の味!我が家の味!』

食ラボで研究中の家庭料理シリーズ。
11月は、“カレー”をとりあげました。

今回、食ラボ研究員に披露してもらったのは、
①思い出の味やふるさとの味
②我が家の味や人気の味

今回もさまざまなカレーが集まりました。

カレー集合

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カレーが初めて日本に伝わったのは明治の初め。もともとはインド発のカレーですが、インドからカレーの原料や米を持ち帰った英国で改良され、カレー粉やカレールウが発明されました。日本へは、その英国風のカレーが最初に伝わったのです。当初は洋食屋のメニュー、その後は軍隊食としても浸透しますが、その後、昭和30年代になると、カレールウを使ったカレーが家庭料理としても普及し、たちまちカレーは人気メニューとなりました。カレーは、もはや押しも押されぬ日本の家庭料理。そんなカレーが、食ラボメンバーの家庭でどう変遷していったのかも、興味深いところです。

まずは“思い出の味、ふるさとの味”から。
岩﨑さんの子供時代、夕方遊んでいるとカレーの香りが漂ってきて、「あ、今夜はカレーだ」ってつぶやいた光景が思い浮かぶそうです。そのころ食べたカレーといえば、具は豚肉(薄切り)、じゃが芋、玉ねぎ、にんじん。カレールウを使う、ごくごく普通のカレーだったとか。キャンプのとき、大鍋で作ったカレーと飯盒でたいたおこげご飯。あるいは登山部だった高校時代に、山で食べたカレー(このときはレトルト)もいい思い出です。

秋元家の場合、昔、お母さまが作ってくれたカレーは、市販のカレー粉と小麦粉を炒めてルウを作っていたそうです。具は、肉は牛肉。野菜は玉ねぎ、にんじん、じゃが芋でした。「玉ねぎは、私が生っぽいのが嫌いだったので、よーく炒めてもらったことを覚えています。ただ、私はそんなカレーより、母がときどき作ってくれたカレーピラフが好きでした。たしか炊き込んで作っていたと思います。ふと思い出し、以前2~3度作ってみたこともあるのですが、どうしても母の味になりませんでした。母が元気なうちに聞いておけばよかったと今でも悔やんでいます」と秋元さん。でも、今回は再び思い出のカレーピラフに挑戦してくれました。

カレーピラフ

 

 

 

 

 
カレーピラフ
 
牧野さんの思い出のカレーは「実家では、具は鶏もも肉、にんじん、玉ねぎ、じゃが芋。ルウは市販のカレールウを使う、普通の日本のカレーでした。味つけも特に工夫はなく、中辛で作っていたと思います。カレーは家族みんな好きでしたが、中でも下の弟は一番のカレー好きで、2~3日続いてもいいほど。そのまま食べたり、生卵を落としたり、ピザ用のシュレッドチーズをかけたりして食べていましたね」。
「ときどき食卓をともにしていた祖母の作るカレーの肉は豚の薄切り肉だった気がします。また、祖父はカレーに必ずしょうゆをかけていたのもよく覚えています」。
また、牧野さんの高校時代、学校の近くにあった「カレーの王様」のカレーのトッピングが印象的だったそうです。福神漬け以外に、細かいダイス状に切ったプロセスチーズやスライスアーモンド、レーズン、みかん缶などがあって、それをトッピングして食べるようになってから、家のカレーにもそれらをトッピングしていたのだとか。お母さまがよく手作りでお菓子を作っていたため、アーモンドやレーズンは家に常備してあったそうです。

また、レーズンを入れたドライカレーも兄弟そろって大好物だったとか。ある時から食卓に上るようになったそうですが、「ポイントはレーズンがたっぷり入っているところでしょうか。料理にフルーツが入っているのが嫌いな方もいますが、我が家は全然OKなんです」。いつだったかお母さまにレシピを聞き、懐かしい味を再現したところ、牧野家でも大好評だったとか。

レーズンドライ

 

 

 

 

 
レーズン入りドライカレー
 
飯塚さんの場合、「実家の母のカレーは、市販のルウを使ったごく普通のカレー。野菜はゴロゴロっと大きな切り方でした。祖母は小麦粉とカレー粉で作ったルウでカレーを作ってくれましたが、実をいうと私はこれがあまり好きではなかったんです」。そんな飯塚さんがカレーの味以上に鮮明に覚えていることがあるそうです。「私がカレーライスというと、そのたびに祖母にライスカレーだと訂正されていました」

そうそう懐かしいですね、カレーライスかライスカレーかの論争は昔からありました。家で食べるのはライスカレーで、レストランで食べるのはカレーライスという説。あるいは1970年代前半まではライスカレーという呼び名が主流で、その後はカレーライスという呼び方が主流になった・・・という説もあります。それにしても、孫がカレーライスというたびに、違う、ライスカレーだよ・・・となおしていたおばあちゃん。そのこだわりに拍手したいです。
また、カレーにしょうゆをかける人も、昔はけっこういた気がします。今のようなスパイスカレーではなく、どちらかといえばカレーうどんの汁の味に近い、和風のカレーだったからかもしれませんね。

 
次は“我が家の味&人気の味”。
岩﨑さんの場合、大人になってから、自分の作るカレーがどんどん変わっていったといいます。現在、岩﨑家のカレーはカレールウを使わず、カレー粉にさまざまなスパイスや調味料を加えてうまみやコクを出しているそうですが、その基本は、昔、ホルトハウス房子先生に習ったカレーがもとになっているといいます。ただし、実際に習ったカレーは、ビーフストックは手作り、カレーソースは2日がかりで作り、牛肉はステーキ肉を焼いて加え、サッと煮るというもの。「当時習ったビーフカレーは、それこそセレブカレー!それに比べ、我が家のカレーはだいぶアレンジした庶民派カレーです」と岩崎さん。
玉ねぎをきつね色になるまで(30分程)炒め続け、しょうが、にんにく、セロリ、にんじんと、トマト缶、カレー粉、スパイスでカレーベースを作ります。そこにヨーグルトやケチャップ、しょうゆ、ウスターソース、スープなどを加えるのが基本です。具は豚肉(肩ロースの角切り)の場合もあれば、鶏肉(骨付き、またはモモ肉角切り)の場合も。塩、こしょう、カレー粉を混ぜて肉に下味をつけ、肉はフライパンで焼いてから鍋に加えて煮こみます。
牛肉の場合は牛すじ。牛すじは手に入るときにたくさん買って圧力鍋でゆで、冷凍してあるので、それを使います。今回はそんな岩崎家の「牛すじカレー」を紹介してくれました。スパイスはいったいどんなものを使ったのでしょうか。
 「カレーベース用に使ったスパイスはクミン、クローブ、コリアンダー、シナモンスティック、ベイリーブス。これらのホールスパイスを、最初にサラダ油とバターで炒めてから加えました。また、最後にガラムマサラ(市販品)とカルダモンパウダーを加え、味を調えました」

牛すじカレー

 

 

 

 

 
牛すじカレー
 
そのほかにも、カレーうどん、肉野菜炒め(カレー粉、オイスターソース、しょうゆ等を混ぜた調味料で仕上げるもの)、カレー竜田揚げ、カレームニエル、タンドリーチキン・・・ などなど。鶏ムネ肉にカレー粉やヨーグルトを混ぜて漬け込み、卵、小麦粉、パン粉を つけて揚げたフライも好きで作るとか。「カレー粉はよく使いますね。あっという間になくなってしまうので、家では業務用のカレー粉を購入しています」

長島家のカレーもスパイスカレー。具は肉系、魚介系、野菜系ありと、種類も味もさまざま。中には薬膳風にハスだけを入れることもあり、毎回違う具と味にしているそうです。 基本的にじゃが芋は入れないカレーだそうですが、上の息子さんが好きなので、たまーにじゃが芋入りのカレーも作るそうです。ルウは使わず、カレー粉は自家製ミックス。
ターメリック、クミン、コリアンダー、パプリカ、カルダモン、クローブ、チリ、シナモン、こしょう等々、配合の違う2~3種類の自家製カレー粉を常備しています。そんなカレー粉を使って今回作ってくれたのは、息子さんの友達にも好評だという「エビ入りココナッツカレー」と最近長島家のみんながはまっている「ラムカレー」です。                   
エビは有頭エビを使用。下処理したあと、殻ごと素揚げしてから加えます。「こうすると、カレーに香ばしさとコクが加わるんです」エビのほかには、玉ねぎ、オクラ、赤唐辛子(あれば青唐辛子を使う)、トマトの水煮(またはトマトペースト)、押し麦。押し麦は食感ととろみ付けに入れようと思いついたのだとか。ココナッツミルクや自家製カレー粉ミックスで軽く煮込み、ナムプラーやヨーグルト、塩で味を調えたら、最後にフライパンでから炒りしたココナッツフレークを加えます。

エビココナッツカレー

 

 

 

 

 
エビ入りココナッツカレー
 
一方、ラムカレーは最初にクローブ・カルダモン・クミンなどのホールスパイスをゆっくり炒めて香りを出し、玉ねぎとセロリのスライスを加え、さらに炒めます。そこにヨーグルトやトマトペースト(またはトマトジュース)などを加え、自家製カレー粉ミックスやカシューナッツのすりつぶしたものを加えて煮込みます。ここにココナッツパウダーとラム肉を加え、肉がやわらかくなるまで煮込み、隠し味にはちみつを加え、最後に再びホールスパイス数種をから炒りして加えます。

ラムカレー

 

 

 

 

 
ラムカレー
 
秋元家では、たまに2~3日じっくり煮込んで作るカレーも作るそうですが、今回はあっという間にできる簡単カレーを紹介してくれました。忙しい時や、コトコト煮込むのがつらい時(暑い夏場など)によく作るというもの。玉ねぎ、なす、トマトをそれぞれ2㎝角に切り、油で炒めたあとカレー粉とミートソースを加え、少々煮るだけ。秋元家ではいつもミートソースを多めに作って冷凍してあるため、これを加えるというわけです。「あっという間に味が決まり、簡単でおいしいですよ」

久保田家のカレーはチキンかポーク。どちらも肉に塩、こしょうしたのちカレー粉をまぶして下味をつけておくそうです。フライパンに油、にんにく、しょうがを入れ、弱火で熱して香りを出したら玉ねぎを加えて炒めます。別鍋に湯を沸かしておき、炒めた玉ねぎとにんじん(すりおろし)を加え、肉も炒めて加え、トマトピューレ、カレー粉を加えて煮込みます。コク出しに少しだけルウを使うそうです。「うちもじゃが芋は入れないんです。もともと実家の母のカレーはじゃが芋入りで、しかも煮込んで形がなくなっていましたが、私自身はくずれてどろどろになったのが嫌いだったからです」結婚後、ご主人はあまりカレーが好きでなかったこともあり、作るのは3カ月に1度くらい。子供たちのためにカレーを作るようになってからも、やはりじゃが芋は入れないままだったそうです。
「豆入りのひき肉カレーもときどき作りますね」。豆はヒヨコマメやキドニービーンズ(水煮)。しょうが、にんにくで香りを出したら、豚ひき肉と粗みじん切りの玉ねぎ、にんじん、ピーマン、きのこをサッと炒めます。湯とトマトピューレ、カレー粉、豆を加えてしばらく煮込み、塩で味をつけます。

豆入りひき肉

 

 

 

 

 
豆入りひき肉カレー
 
飯塚家で今人気のカレー料理といえば、タイ風スパイシーチキンとサテ。スパイシーチキンはタイのシーズニングソースとカレー粉、にんにくで味をつけ、焼いたもの。

スパイシーチキン

 

 

 

 

 
スパイシーチキン
 
タイ風サテは、カレーとココナッツ風味の串焼きです。アジアンエスニック独特の風味が食欲をそそるため、キャンプやバーベキューのときに作ったり、お客さまの気軽なおもてなし用にも作ったりするそうです。

タイ風サテ

 

 

 

 

 
タイ風サテ
 
牧野家は家庭のカレーも、外で食べるカレーもインド風、タイ風・・・いろいろなカレーが好きです。家庭のカレーは、しょうが、ねぎのみじん切りをよく炒め、シナモンパウダー、シード、コリアンダー、クミンなどを少々加え、玉ねぎ、にんじんを炒めてから水を加えて煮、最後にじゃがいもを加えて煮てからルウを加えるというもの。ルウは市販のフレーク状のルウを使用していますが、あまりぽってりしないほうが好み。肉は鶏肉、豚肉(肩ロース)、牛肉(すね肉)など、そのときどきで違い、ご飯も白飯のほか、ターメリックパウダーを加えて炊いたご飯にすることもあるそうです。

夏場はさらっとしたスープカレー風も好評だとか。豚薄切り肉、オクラ、ミニトマト、玉ねぎが具。かつお昆布だしで煮て、市販のルウを人数分に対して半量入れ、残りの味つけはしょうゆで。さらっと食べられ、そうめんにも合うそうですよ。

そのほかカレーは、外出するときの、家族のための作りおきメニューのひとつでもあり、息子さんの友だちが泊まりに来るときに出す場合もあるそうです。また、余ったカレーを息子さんのお弁当のおかずにすることも。保温ジャーに入れて行けば温かいので、いつでもおいしく食べられ、好評だとか。

というわけで、食ラボメンバーたちの“思い出のカレー”は、ほぼ全員がルウを使って作るカレーでした。小麦粉とカレー粉でルウを作った時代を経て、市販のルウが登場すると、ほとんどの家庭がそれを使ってカレーを作るようになったこともわかりました。
その後は、日本にもさまざまな外食店ができ、欧風カレーのほか、北インドや南インドのカレーが紹介されたり、スリランカやバングラデシュのカレー、あるいはココナッツミルクを使う、タイなどのアジアカレーも紹介され、カレーはどんどん多様化。家庭で作るカレーも多様化し、どんどん個性的になっていきました。
現在、食ラボメンバーが作っているカレーも、いろいろなタイプに分かれています。また、同じ人でもインド風、タイ風という具合に日によって作り分けていたり、時間をたっぷりかけて作るカレーと、時間のない時に短時間で作るカレーを作り分けする時代にもなっているようです。
 

 

以下は、市販のカレーペースト(ビン入り)を使って試作した参考カレーです。ルウとは違い、じっくり炒めた数種の野菜とさまざまなスパイスを加え、ペースト状にしてあるので、用意するものは肉だけ。時間がないときでも本格的な味が楽しめそう。

マスコットフーズ
www.mascot.co.jp

porkbintal

バターチキンカレー

 

 

 

 

 
豚バラ肉を使ったポークビンダルカレー/鶏ムネ肉を使ったバターチキンカレー