砂糖、みりん、料理酒の研究 まとめ

『身近な調味料をもっとよく知り、おいしく使おう!』

もともと「食のラボラトリー」は、普段からおなじみの食材や調味料をもっとよく知り、おいしい使い方を研究しようという思いから始まりました。そしてその第1弾が“塩の研究会”。塩そのものの味を比較したリ、調理してみると、新しい発見がいっぱいありました。そこで、今年は塩に続いて、さまざまな調味料を研究することにしました。

5.砂糖、みりん、料理酒の研究 まとめ
2月の食ラボから、砂糖、みりん、甘味料、料理酒をとりあげ、勉強&比較研究をしてきましたが、今回はその総集編として、砂糖やみりんのやり残した部分をとりあげることにしました。砂糖、甘味料では、まだ取り上げていなかった「ぶどう糖」「トレハロース」「ココナッツパームシュガー」をそれぞれ味比較。そして調理比較は、みりんを煮きって使う“煮きりみりん”とそのまま使うのでは、風味や味がどう違ってくるのかを2種類の料理でで比べてみることにしました。

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「ぶどう糖」はぶどう、柿、いちじくなどの果実のほか、はちみつなどに多く含まれている単糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース)の一種。砂糖もぶどう糖と果糖からできています。一方、ぶどう糖は体内では“グリコーゲン”という形で筋肉や肝臓の中に蓄えられ、主に脳や筋肉を正常に動かすために使われます。中でも脳はぶどう糖だけをエネルギーとして使うため、炭水化物などに含まれるぶどう糖は、脳を働かせ、思考能力や集中力を高めるためにも、非常に重要な役割をしています。

「トレハロース」は、キシリトールやオリゴ糖、ステビアなどと同様に「天然甘味料」の1つで、きのこ類や酵母などに含まれる糖です。太古の昔から地球上に存在しており、中でもきのこ類には多く含まれ(重さの2割以上)るほか、酵母にも多く、パンやビールなどができる過程で酵母が使われるため、私たちは自然にトレハロースを摂取していることになります。一方、甘味料のトレハロースは、酸や熱に対して安定した糖質であり、でんぷん質の劣化やたんぱく質の変性を防止したり、スポンジをしっとり仕上げる働きもあるため、市販の菓子類にはひんぱんに使われています。

「ココナッツパームシュガー」はヤシ類の樹液からできるヤシ砂糖で、サトウヤシやニッパヤシから作られるのが「パームシュガー」、ココヤシから作られるのは「ココナッツシュガー」と呼ばれます。主にタイやインドネシアをはじめ、インド、アフリカ、南アメリカなどで生産されています。ヤシ砂糖には鉄分やカリウム・マグネシウムなどのミネラルも大変豊富ですが、血糖値の上昇具合を示すGI値は、白砂糖が109、黒糖が99、はちみつ85、メープルシロップ73に比べ、ココナッツパームシュガーは35という低さ!糖尿病などでお悩みの人にはうれしい砂糖です。
 
試食後の食ラボメンバーの感想は次の通りです。

◎味の比較(そのまま / 水溶液)
・ぶどう糖
  
味は砂糖よりあっさりしている。すっきりした甘みでおいしい。
粒子が細かいせいか、サッと溶ける。
後味にわずかな苦みを感じる。
水にはなかなか溶けないが、口の中ではすぐに溶けた。

・トレハロース 
あまり味がしない。明快な甘みを感じない。おいしいとは思えない味。
後味に、膜状か繊維質のようなものが残る感じ。
水にはなかなか溶けない。
水溶液になると、ほかの味のじゃまをしない味だが、甘さはあまり感じない。

・ココナッツパームシュガー 
やさしい甘みで、おいしい。
砂糖よりコクがあるが、黒糖よりクセがなく、上品な甘さ。
ちょっと和三盆の味のよう。いつまでも食べていたい。
デザートに使ってもよさそう。
水には比較的溶けやすい。水溶液も変わらぬおいしさ。

次のテーマは・・・
煮きりみりん 
みりんや酒のアルコール分をとばすことを“煮きる”といいます。かつては、「調理の際は、みりんも酒も必ず煮きってから使うこと」とされてきました。煮きらずに使うと、アルコールのにおいが料理の風味を損なうが、煮きることでうまみや甘みだけが残り、風味がよくなるとされたからです。

煮きる方法は、みりんや酒を鍋に入れて火にかけ、一度沸とうさせ、アルコール分をとばします(電子レンジで加熱(大さじ1で20~30秒程度)する方法もあります)。プロの料理人はさらに、沸とうしたところで鍋を傾け、コンロの火を鍋に入れてアルコール分をとばします(火をつけるほうが、みりんや酒の一部が軽くこげ、より香りがよくなります)。

ところが近年は、“みりんは煮きる必要がない”という考え方も出てきました。昔に比べてアルコールの調理効果が見直されているからで、煮きってアルコール分をとばしてしまうと、煮くずれ防止効果が下がったり、食材の持つうまみも外に溶けだしやすくなるからだとか。ただし、きんとんのようにアルコール分を必要としない料理や、そしてもちろん、子供向けの料理には、必ず煮きってから使うことが必要です。

次の調理比較では、食材や作り方はすべて同じ条件のまま、みりんだけ“そのままのもの”と“煮きりみりん”を使い分けて、比べてみました。なお、加熱する調理では、みりんをそのまま使ってもアルコール分はとぶため、今回は生で使うものに限定しました。

◎調理比較 「みそディップ 野菜スティック」

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ディップは、みそ:本みりん=2:1。みりんは、そのまま使うものと、煮きったものの2種類用意し、それぞれみそと混ぜ合わせる。野菜は、きゅうり、セロリ、にんじんをそれぞれスティック状に切る。

・本みりんをそのまま使用     
煮きりみりんを使用したものに比べると、しょっぱさは強いがさっぱりとした味。そのまま使用してもアルコールくささやや味はほとんど感じられない。酒のあてにはこちらの方が合うかもしれない。
・煮きりみりん使用  
そのまま使用したものに比べ、色が濃くなり、みりん独特の“てり”や“つや”が出ている。味に甘みとうまみが加わった。“甘みそ”として、ご飯の友にもよさそう。いつ食べるかにもよるが、最終的には個人の好みの問題か?

◎調理比較 「豚肉の冷しゃぶ みりんドレッシング」

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<材料>
豚(しゃぶしゃぶ用)肉350g、野菜(ブロッコリースーパースプラウト、水菜、きゅうりなど)各適量、みりんドレッシング(本みりん、しょうゆ各70㎖、おろしにんにく1/2かけ分、レモン汁11/2個分)
<作り方>
①みりんは、そのまま使うものと、煮きって使うものの2種類用意し、それぞれしょうゆ、おろしにんにく、レモン汁とともにボウルに入れて混ぜ合わせる。

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②鍋にたっぷりの水と塩(水の1.8%量)を用意。肉を入れてほぐしてから、弱火にかける。

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③ゆっくり温度を上げていき(決して煮立たせないこと)

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④70℃になったらぬるま湯にサッと通してアクを取り除く。

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⑤ペーパーにとって水けをきり、冷蔵庫で冷やしておく。冷えたら野菜とともに皿に盛り、ドレッシングを回しかける。

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試食後の食ラボメンバーの感想は次の通りです。

・本みりんをそのまま使用   
さっぱりとした味わいに仕上がる。
煮きりみりんを使ったドレッシングに比べると、酸味が強め。
アルコールくささはほとんど感じないが、味に少々カドがある。
・煮きりみりん使用 
まろやかで、コクが感じられる。
煮きることで、水分がとび、その分味が濃くなった。それを見越して、みそとみりんの分量は調整が必要。
みりんにまろやかさが増したぶん、逆に酸味が弱くなってしまったので、これも調整が必要。

以上、今回は砂糖や甘味料、みりん、料理酒の総まとめとして、砂糖類や甘味料の中からまだ取り上げていなかった糖類の味を比較しました。また、かつては煮きってから料理に使うのがあたりまえだったみりんや酒ですが、近年はそのまま使うほうがいいという考え方もあり、それを推奨しているメーカーさんもあるため、同じ条件で比較してみました。
その結果、ディップやドレッシングで比べてみる限り、味にまるみやうまみが出るのは、やはり煮きりみりんを使った方が上という声が多かったのですが、そのまま使っても、しょうゆやみそと合わせたためか、アルコールくささや味はほとんど感じませんでした。逆にさっぱりとした甘みが加わるため、お酒のつまみなどには向くという声もあり、今回は、食べるシチュエーションや個人の好みによっても意見が分かれました。とはいえ、みりんも料理酒もアルコール。お酒の苦手な人や子供向けの調理には、今まで通り、煮きって使うことが必要なのはいうまでもありません。