発酵、発酵食の研究6

『発酵、発酵食をもっと知ろう!』

今年は「発酵、発酵食」がテーマ。さまざまな角度から“発酵や発酵食品”そして“発酵食品を使った料理”を研究しています。

“乳酸菌と乳酸発酵”の中から、今回は動物性の乳酸発酵食品である「ヨーグルト」と「チーズ」を取り上げました。また、「日本各地のご当地汁」シリーズ。今月は山形県庄内地方の“とうもろこし汁”。夏の郷土汁に、とうもろこしを芯ごと入れるみそ汁があるので、今回はそれを作ってみんなで試食しました。

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手前真ん中は、手作りしたリコッタチーズ、右は市販品。手前左はカッテージチーズ(市販品)、奥はヨーグルト(市販品)。

◎乳酸発酵の食品 ヨーグルト、チーズ
乳酸発酵によってできる動物系の食品の代表が、ヨーグルトやチーズです。
ヨーグルトは、原料の“乳”を乳酸菌や酵母によって乳酸発酵させて作る発酵食品で、この乳酸菌の力やさわやかな風味がヨーグルトの大きな魅力。毎日の健康に役立つ食品としても注目されています。一方チーズは、原料の“乳” の固形成分を濃縮したもの。“乳”に乳酸菌や凝乳酵素を添加させて凝固させ、それを細菌やカビなどの微生物で熟成させ、原材料の“乳”より、味覚も保存性も向上させた食品といえます。

◎ヨーグルトに使われている“乳酸菌”の種類
ヨーグルトに使われる主な乳酸菌にはビフィズス菌、ブルガリクス菌、アシドフィルス菌、サーモフィルス菌、ガセリ菌などがあります。このうちビフィズス菌は、もともと大腸内に存在する乳酸菌で、善玉菌の代表ですが、年齢とともにその勢力は低下するため、日ごろからヨーグルト等でとり続けたい菌といえます。

乳酸菌の多くは、腸に届く前に胃酸などにより死んでしまうといわれていますが、近年は“生きて腸まで届き、定住性も高いガセリ菌SP株”などの菌を使用したヨーグルトも多くなっています。

◎ヨーグルトの乳酸菌が人の体にもたらす働き
“乳”を乳酸発酵させたヨーグルトは、牛乳の栄養と同様にタンパク質やビタミンB2、カルシウムなどの栄養が豊富。さらに近年は“腸活食材”としても注目されています。腸内フローラを良好なバランスに保ち、たんぱく質やカルシウムの消化吸収を促し、便通を整えます。また、善玉菌である乳酸菌が悪玉菌の定着や増殖を抑え、腸内の有害物質を体外に排出する役割りもするため、さまざまな病気を防いだり、免疫力を高めます。

乳酸菌は、摂っても腸の外に排泄されてしまうため、毎日摂り続けることが大切です。さらに、ビフィズス菌の場合は加熱に弱く、50℃以上になると徐々に死滅することがわかっています。調理に使う場合は50℃以下の状態で使うか、温める場合は最後に加え、煮立たせないようにするのをおすすめします。

◎チーズに使われている“乳酸菌”、チーズの栄養
原料となる“乳”の種類や微生物、加工方法によってさまざまなチーズとなり、その数は世界中で1,000種類以上あるといわれています。そのチーズづくりに使われる乳酸菌の代表的なものには、ラクトコッカス・ラクチス(酸を生みだす菌)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(風味や香りを生み出す菌)などがあります。

栄養は、原料の“乳”を凝縮させている分、たんぱく質、脂質、ビタミンAなどは“乳”の10倍、カルシウムやビタミンB2は5倍も含まれています。また、加熱していないナチュラルチーズには乳酸菌が生きていますが、チーズ中の乳酸菌量は、ヨーグルトに比べると、それほど多くはありません。
※ナチュラルチーズを加熱して溶かし、乳化剤を加え、高温殺菌して保存性を高めたプロセスチーズには、生きた乳酸菌はいません。

乳酸菌が生きているのが、ナチュラルチーズ
乳酸発酵したあと、高温での加熱処理をしていないチーズのことをナチュラルチーズといい、チーズの中には乳酸菌が生きています。原料の“乳”の種類や加工方法によってフレッシュチーズ、白カビチーズ、青カビチーズ、ウォッシュチーズ、シェーブルチーズ、ハードチーズ、セミハードチーズなどのチーズがあります。

この中で、フレッシュチーズとは熟成させない、またはほとんど熟成させないまま食べるナチュラルチーズ。モッツァレッラ、ブッラータ、マスカルポーネ、フロマージュ・ブラン、フェタ、ブルサン、カッテージチーズなどがあり、あっさりして水分が多いのも特徴です。
●カッテージ (Cottage) チーズはオランダ原産のフレッシュチーズ。脱脂乳などから作られ、水分を約80%含む。淡白な味と多少の酸味、さわやかな風味がある。
●リコッタ(Ricotta)はイタリア原産。もともとは羊乳のチーズを作る際に出た ホエーを再利用したもので、再び(ri)煮た(cotta)という意味から「リコッタ」という名になった。さっぱりしてほんのり甘く、脂肪分が少ない。デザートに使われることも多く、シチリアの郷土菓子「カンノーロ」がおなじみ。
※リコッタは、厳密にいえばチーズではない
フレッシュチーズの仲間に入れられるリコッタですが、イタリアの法律では“乳の乾酪素(カゼイン)を凝固させたものがチーズ”であるため、その規定からはずれるリコッタは“乳製品ではあってもチーズではない”とされています。

<今月のご当地みそ汁>
◎山形 とうもろこし汁

庄内地方でよく食べられている夏のみそ汁。輪切りにしたとうもろこしを、芯ごと入れた汁です。とうもろこしの芯から甘いだし汁が出るので、だしは使わない家も多いそうです。“とうもろこしは常温で24時間おくと、おいしさが半減する”といわれるので、とりたての鮮度のよいとうもろこしを用いるのもポイントです。

<今月の料理ラボ>

◎かんたんリコッタチーズ作り
◎ヨーグルトを使ったザジキソース ラムのローストに添えて
◎カッテージチーズと焼きなす、アボカド、トマトサラダ クミンドレッシング
◎今月のご当地みそ汁 山形「とうもろこし汁」

◎◎かんたんリコッタ&ホエーのバナナジュース/秋元作
材料 (リコッタのできあがり150g~200g):低温殺菌牛乳1000ml、ナチュラルヨーグルト1カップ(200CC)、バナナ2本

作り方
①牛乳とヨーグルトは1時間ほど常温においてから鍋に入れる。弱火にかけ、木べらでゆっくり混ぜながら温める。10分ほどして、もろもろっと固まり始め、分離したら火からおろし、静かに漉す。 ※ボウルなどにザルをのせ、ガーゼ(写真は、クッキング用の不織布のガーゼ)などを敷いて漉すとよい。
②10分ほど置き、汁が出なくなったらできあがり。 ③漉したあとにはやや黄色がかかった汁(ホエー)が残る。これとバナナをミキサーにかける。

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今回手作りしたのがリコッタ(Ricotta)。見た目も味もよく似ているカッテージチーズを家で作るには、牛乳を煮てレモン汁やビネガーを加えて作るのに対し、リコッタは牛乳にヨ-グルトを加えて煮ます。
※カッテージはオランダ原産。リコッタは南イタリア原産で、本来はチーズを作る際に出るホエーを再利用したもの。ほんのり甘いので、デザートに使われることも多く、シチリアの郷土菓子「カンノーロ」でもおなじみ。

「もちろんイタリア本来のリコッタの作り方とは違いますが、本物に近い味を、家庭でも簡単に作れますよ」と秋元さん。手作りのリコッタは、手作りのカッテージよりほろっとやわらかめにできあがるイメージです。

さらに秋元さんに教わったのが、漉して残った汁(ホエー)を使ったバナナジュース。「バナナと一緒にミキサーにかけ、飲むのがおすすめですよ」。チーズを漉したあとに残る、若干レモン色をした汁がホエー(乳清)。高たんぱく&低脂肪のうえ、カルシウムや各種ビタミン類を含むホエーの栄養は今注目の的。捨てるなんてもったいないのです。多少酸味のあるホエーとバナナがよく合い、すっきりしたジュースになりました。

◎ザジキソース 仔羊肉のローストに添えて/飯塚作
材料(7人分):仔羊(骨付き)肉7切れ、ハーブ(ローズマリー、オレガノ)適量、オリーブオイル大さじ2、塩、こしょう
<ザジキソース>ギリシャヨーグルト1パック(400g)、サワークリーム1/4パック(1パック90ml)、おろしにんにく1/2かけ分、ディル(みじん切り)大さじ2、レモン汁大さじ1、レモンの皮(すりおろし)適量、塩、こしょう

作り方
①ハーブ、塩、こしょうをプロセッサーにかけ、オリーブオイルを加える。
肉に①をまぶし、1時間ほどおく。
②ザジキソースを作る。
③フライパンを熱して①を香ばしく焼き、器に盛って②を添える。

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ギリシャ料理でよく使われるのが、ヨーグルトベースのザジキソース。今回のように、ローストしたラム肉によく合うほか、サーモンやカジキマグロなどの魚介類にもおすすめ。夏にぴったりのさわやかなソースです。
「ギリシャヨーグルト以外のプレーンヨーグルトを使う場合は、軽く水切りしてから使います。また、魚介類に添える場合は、ソースにすりおろしたきゅうり(塩をして水気を絞ったもの)を加えてください」と飯塚さん。

◎カッテージチーズと焼きなす、アボカド、トマトサラダ クミンドレッシング/牧野、秋元、久保田作
カッテージチーズ適量、なす(縦に5mm厚さに切る)4本分、アボカド(さいの目切り)1個分、トマト(さいの目切り)2個、オリーブオイル大さじ2 <ドレッシング>クミンシード小さじ1/4、オリーブオイル1/2カップ、白ワインビネガー1/3カップ、塩小さじ1、砂糖小さじ1/2、粗びきこしょう少々

作り方
①クミンシードは乾煎りし、冷ましておく。残りの材料でフレンチドレッシングを作り、クミンシードを加えて混ぜ合わせる。 ②なすにオリーブ油を絡め、フライパンで焼き色がつくよく両面焼く。
③器に②を並べ、上にトマト、アボカド、カッテージチーズを散らし、①をかける。

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あさっぱりした味のカテージチーズを、香ばしく焼いたなすやクミン風味のドレッシングが引き立てます。こちらも夏にぴったりの一品。

◎カッテージチーズのキッシュ/飯塚作
飯塚さんが自宅で焼いてきてくれました。低脂肪のカッテージチーズと野菜がたっぷり詰まった、ヘルシーでおいしいキッシュでした。

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◎今月のご当地みそ汁 山形 とうもろこし汁/久保田作

材料(5~7人分)水1ℓ、とうもろこし1本、みそ100g程度

作り方
とうもろこしは2~3㎝幅の輪切りにし、分量の水とともに芯ごと鍋に入れ、弱火で水からゆでる。20分ほどして粒がやわらかくなったら、みそを溶き入れる。

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テーマ「発酵と発酵食の研究」の6回目は、「乳酸菌、乳酸発酵」の中から、乳酸発酵によってできる食品「ヨーグルト」と「チーズ」を取り上げました。
牛乳とヨーグルトで手作りした「リコッタ」は、手作りのカッテージチーズより、しっとりしてやわらかめでした。そして、できたてのほんのり甘いリコッタには、栗のはちみつをかけ、デザートとしていただきました。

今月のご当地みそ汁は、山形の“とうもろこし汁”。要はとうもろこしを入れたみそ汁なのですが、“輪切りを、芯ごと入れる”のにはさすがに驚きました。笑えるほどインパクト大!さらにその味。山形のサイトには“だしは不要”とあったのですが、食べるまでは少し疑っていました。ところが、一口飲んで納得!とうもろこしの芯から実にいいだしが出て、本当にだしいらず。旬のとうもろこしの香りを満喫できる、シンプルなみそ汁でした。