だしの研究9

『身近な調味料をもっとよく知り、おいしく使おう!』

「食のラボラトリー」は、普段からおなじみの食材や調味料をもっとよく知り、おいしい使い方を研究しようという思いから始まりました。その第1弾が“塩の研究会”。
塩そのものの味を比較したリ、調理してみると、新しい発見がいっぱいありました。
そこで、今年は塩に続き、さまざまな調味料を研究することにし、砂糖、みりん、甘味料、料理酒、酢などの身近な調味料を改めて見直し、比較研究をしてきました。
そして、昨年11月からは「だし」をとりあげています。

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9.だしの研究⑨
「だし」の研究の9回目。かつお節や昆布などの単体のだし、合わせだし…その他の味比較をしてきましたが、今回のテーマは「中国料理のだし」です。

◉「湯」はスープという意味
中国語で「湯(タン)」はスープのこと。料理としてのスープのほか、だしとしてのスープの意味もあります。そんな「湯」にもいろいろな種類があります。

「毛湯(マオタン)」鶏ガラなどを使ってとる基本スープで、だし専用のスープ。「鶏湯(ジータン)」と呼ばれることも多い。

「白湯(パイタン)」白濁した白いスープ。豚骨のほか、豚足、もみじ(鶏の足)、豚の背脂、豚の網脂などを使ってとる。このスープだけは強火でぐらぐらと煮立ててとることで、
脂がお湯に乳化して白く濁り、豚足やもみじなどからコラーゲンが溶け出すので、濃厚な味になる。日本でもよく豚骨ラーメンなどのスープに使われている。

「素湯(スータン)」植物性のスープ。植物性のスープは中国料理では珍しく、主に精進料理などに用いる。干しいたけ、緑豆、大豆、大根、にんじんなどを用いてとる。

「清湯(チンタン)」澄ましスープ。使う材料に決まりはなく、鶏肉、鶏ガラ、豚肉、牛肉、中国ハムなどを単独で使ったり、組み合わせて使うスープの総称。
清湯の条件は“スープが澄んでいること”で、基本の毛湯に、さらに別の材料を加えて清湯をつくることもある。

「上湯(シャンタン)」「頂湯(ディンタン)(ティンタン)」
清湯の中でも、使う食材や味のレベルによって、「上湯」「頂湯」と呼ばれる上級スープもある。
中でも、中国浙江省の金華地区で飼育された金華豚から作られる“金華火腿”は、熟成したうまみと芳醇な風味で知られる高級食材。これを用いてとったスープは、毛湯などに比べると一線を画する。

◉極上「清湯(チンタン)」づくり 
さまざまな中国料理のスープ(だし汁)の中から、今回は長島さんのリードで、家庭でも比較的簡単にできる上等スープ(だし汁)、「清湯(チンタン)」を作ってみることにしました。
鶏ガラを使った「毛湯(マオタン)」は家庭でとる人も多いと思いますが、澄んだスープをとるのはむずかしく、材料も手に入りにくいと思っている人も多いと思いのではないでしょうか。
ただ、「清湯」にもいろいろな作り方や材料があります。その中から今回は、ひき肉(鶏、豚)だけでとる「清湯」を作ることにしました。これなら材料も簡単に手に入ります。
また、お店ではスープ(だし汁)をとったあとのひき肉を、お店で出す別の料理には使用しませんが、家庭向けということで、そのひき肉を使って料理を作ってみました。

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<材料> 鶏ひき肉、豚ひき肉各500~600g、しょうがのみじん切り2かけ分、長ねぎ(白い部分、青い部分)のみじん切り各1本分、酒150㏄、水5ℓ
※今回の出来上がりのスープ量は約4.5ℓで、約10人分の麺料理のスープや、料理2点のだし汁用に使用できる量になります。
スープは冷凍も可能なので多めに作っておくと便利ですが、それでも多すぎる場合は、それぞれの材料を調整してください。
※スープをとるだけなら、しょうがは薄切り、長ねぎはぶつ切りを使用しますが、今回はスープをとったあとのひき肉を、別の料理に使いやすくするため、
どちらもみじん切りにして肉に混ぜ込みました。

<作り方>
①ボウルによくたたいた鶏・豚のひき肉を入れ、しょうがとねぎ、酒を加え、手でもみこむ。水を徐々に加えていき、肉がだまにならないよう混ぜながら、ドロッとした状態にする。

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②①を大きめの鍋に移し、火にかける。フタはぜったいにせず、沸騰するまではかき混ぜながら強火にかける。沸騰したらアクを丁寧に取り除き、
その後コトコトッと具が動く程度の弱火にし、静かに30~40分煮続ける。

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③にごっていたスープが徐々に澄んで、肉がまとまったら、火を止める。静かにザルにあけてスープを漉し取り、スープと肉類を分ける。レモン色をした澄んだスープができたらOK。

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「清湯」を使った料理づくり
今日作った極上スープ「清湯」と、これを作る際に使ったひき肉を利用して料理を作り、みんなでいただきました。

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◎ひき肉と夏野菜のエスニック炒め /長島作 
清湯づくりに使ったひき肉だね(鶏ひき肉、豚ひき肉、しょうが、長ねぎ)を、夏野菜(オクラ、とうもろこし、赤ピーマン)とともに炒め合わせました。「夏野菜をサッと炒め、清湯を少々加えます。肉には火が通っているので、最期に肉と野菜をサッと炒め合わせるだけ。野菜は炒めすぎないのがコツですね」味付けはシンプルに塩味で。ニョクマムもほんの少々加え、最後にライムをひとしぼりしたら、アジアンエスニック味になりました。

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◎マーボーなす/長島作
同じひき肉だねを使う料理の2品目は、ピリ辛味のマーボーなす。清湯づくりに使ったひき肉だね(鶏ひき肉、豚ひき肉、しょうが、長ねぎ)、なす、合わせ調味料(豆板醤、豆鼓醤油、酒、しょうゆ)、清湯、
水溶き片栗粉、パクチー、白髪ねぎ、花椒、サラダ油。
「なすは油でサッと揚げておきます。フライパンに油を熱してしょうが、にんにんくを炒め、肉だねを加え、合わせ調味料とスープ(清湯)、揚げたなすも加えて合わせ、
最後に水溶き片栗粉でとろみを出し、花椒をふり、パクチーと白髪ねぎを飾りました」

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◎極上清湯のシンプルフォー/長島作
暑い暑い日だったので、極上の清湯を使ったスープ麺は中華麺ではなく、香菜をたっぷりのせたフォーにしました。具はパクチー、青ねぎ、黄にら、グリーンカール、ライム。
「清湯を温めたら、塩、多めのこしょう、ニョクマムで味をととのえ、ゆで上げて器に盛った麺(フォー)に注ぎ、香菜、黄にら、グリーンカール、ライムをトッピングします」。
味つけも具もごくごくシンプル。とにかくスープが極上で、おいしくて最後の一滴までスープを飲み尽くしました。

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“だしの研究”の9回目。今回のテーマは「中国料理のだし」。さまざまな中国料理のだし(スープ)の中から、家庭でもできる極上の澄んだスープ「清湯(チンタン)」を作ってみました。
鶏と豚のひき肉、しょうがや長ねぎさえ用意すれば、30~40分で作ることができ、しかもそのひき肉は二次使用して別の料理に使えるという点も魅力的です。

「清湯」は、作ってみると思っていたよりずっと簡単で、最初にポイントさえおさえれば誰でも失敗なく作れそうです。また、30~40分かかるといっても、
大半は弱火で煮続ける時間ですので、ほかの料理の準備をしながら待つことができます。
そろそろかな~と思って鍋の中を見ると、最初はにごっていたスープがいつのまにか澄んでいて、実に感動的です。
1つ心配だったのは、スープをとったあとの再利用のひき肉の味です。うまみが抜けてしまって大丈夫かと思っていましたが、心配するほどではありませんでした。
むしろ、肉にゆっくり火を入れたため、空気が入り、ふわっとやわらかい食感になったことや、調味料が少量でも浸み込みやすくなった気がしました。

気軽なひき肉で極上のスープが簡単にとれるうえ、そのひき肉を別の料理にも使える・・・。エコで一石二鳥な調理は、家庭料理にぴったりだと思いました。