油の研究6

『身近な調味料をもっとよく知り、おいしく使おう!』

「食のラボラトリー」は、普段からおなじみの食材や調味料をもっとよく知り、おいしい使い方を研究しようという思いから始まりました。その第1弾が“塩の研究会”。塩そのものの味を比較したリ、調理してみると、新しい発見がいっぱいありました。そこで、「塩」に続き、さまざまな調味料を研究することになりました。
これまでとりあげたのは、「砂糖」「みりん」「酒(料理用)」「酢」など。さらに昨年は1年間にわたってさまざまな「だし」をとりあげました。そして、今年のテーマは「油」。そして、今年のテーマは「油」。
さまざまな油について研究しています。
6回目は、最近注目され始めた「ギー」を取り上げました。

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<ギー(Ghee)って何?>

◉バターを熱して作られる“バターオイル”
動物性油脂の1つで、インドを中心に南アジアで作られます。牛や水牛、山羊の乳から作る“マカーン”と呼ばれる発酵バター(塩不使用)を煮て溶かし、これを漉して、たんぱく質や水分を除いた、純粋なバターオイルです。

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※おすすめの市販のギー GHEE EASY(ギー・イージー)
酪農大国オランダ産のギー。原料はEU産グラスフェッド・バター100%。放牧され、天然の牧草を食べ健康的に育った牛。そのミルクでできたバターからギーを作っている(EUではオーガニック認証取得済)

◉料理にも、伝統医療「アーユルヴェーダ」にも使われてきたオイル
インド料理店やインドの家庭では、カレーやチャパティなどに日常的に使われる食用
油。ギーの香りは、インド人にとっては食欲をそそられるものだそうです。
さらに、伝統医療「アーユルヴェーダ」でも昔から使われてきたもの。火傷、口内炎など、抗炎症作用にも効果があるため、実際の医療現場でも使われているほか、美容のためのオイルとしても知られています。
※目の周囲に土手を作り、そこにオイルを溜めて行う眼球エステ「ネトラバスティ」のオイルは、必ずギーが使われます。

◉ハリウッドセレブも注目、体によいオイル1位!に選ばれたオイル
ギーは今、ハリウッドセレブたちにも大注目されているオイルです。TIME紙で「世界で最も健康的な食品50位」に選ばれたのをはじめ、米自然療法協会が選ぶ「体によい油ベスト5」では、第1位に選ばれています。

◉エネルギーになりやすく、しかも脂肪がつきにくい、スーパーオイル
少し前に大流行したココナッツオイルもそうですが、ギーはオイルの中でも、健康的にすぐれた「中鎖脂肪酸」です。ギーのもとになるバターには、脂肪として体内にたまりやすい「長鎖脂肪酸」が多く含まれていますが、バターから作られるギーに多く含まれるのは「中鎖脂肪酸」で、こちらは体内で分解されやすいため、燃焼してエネルギーになりやすく、脂肪がつきにくいのが特徴のすぐれものオイルです。

<ギーの特徴とは?>

◉加熱に強い
(バターの煙点が170℃に対し、ギーは250℃と高い)ので、炒め物や揚げ物にも向きます。

◉長期保存も可能
(酸化しにくく、日持ちするうえ、バターと違って常温でも長期保存可能なので、昔から保存食としても重宝されてきました)。

◉コクがありながらしつこくない。
EX.フレンチトーストを、ギーで焼くと、バター風味なのに、バターよりさっぱりして、ほんのり甘い。

<ギーを作ってみよう>
市販のバターを使って、家庭でも簡単にギーを作ることができると聞き、食ラボでも「ギー作り」を試してみることにしました。

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<材料>
バター(塩不使用タイプ)…1.5kg  
※本来は発酵バターを用いるようですが、今回は、価格的にこなれた通常のバターを使用しました。

<作り方>
1、バターを鍋に入れ、ごく弱火で溶かしていく。
2、白いものが上に浮かんで広がり、泡が出てくるが、フツフツとした状態のまま、煮詰めていく。
3、30分ほどして泡が細かくなり、黄金色の澄んだ液体部分が拡大してきたら火を止める。
4、ボウルなどの容器にザルを重ね、不織布のキッチンペーパーをのせ、3を漉す。

※1.5kgのバターから、最終的に1kgのギーができました。
※冷めたら、保存容器などに移し、そのまま常温で保存するか、冷蔵保存(冷えると固まる。冬場は常温でも固まる)。半年~1年、長期保存もできるので、多めに作っておくのもおすすめです。

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<ギーで料理を作ろう>
手作りしたギーを使って料理を作り、みんなで試食しました。

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◎えびとグリーンアスパラのギー炒め/食ラボ作            
殻付きえびは背側から(殻をつけたまま)半分に開き、下処理しておく(背わたを除き、片栗粉をまぶしてから水洗いし、臭みを取り除く)。グリーンアスパラは斜め切り。
フライパンにギーとつぶしたにんにくを入れて熱し、先に殻側を下にしてえびを入れ、両面を香ばしく焼くように炒める。赤唐辛子、ローズマリー、アスパラも加えてさらに炒め、塩で調味する。

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ギーは、もとがバターだけに、調理するとバターのコクが加わり、えびや殻の風味から出るうまみともよく合いました。それでいながら、バターで炒めるよりさっぱり軽めに仕上がるという印象を食ラボメンバーたちももったようです。
また、煙点が高いギーだと、えびだけでなく、にんにくや赤唐辛子も焦げにくいため、調理がしやすいと思いました。

◎ひき肉とオクラのスパイス炒め/長島作 
フライパンにギー、にんにく(みじん切り)、しょうが(せん切り)を入れて熱し、香りが出たら合いびき肉を加え、よく炒める。そこにスパイス(ターメリック、クミン、カルダモン、こしょう)、刻んだカシューナッツを加えて炒める。最後にオクラ(下ゆでしたもの)を加えて炒め合わせ、ギーとしょうゆを少々加え、味を調える。

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ターメリック、クミン、カルダモンなどのスパイスをきかせ、ギーで炒めたもの。
カレー粉は使わなくても、インドエスニックの風味たっぷり。こういうスパイスのきいた炒め物には、さすがにギーがぴったり合うなと納得しました。

◎炊き込みご飯2種(鶏肉、とうもろこし)/食ラボ作
一口大に切った鶏肉に塩をしたあと、スパイス類(チリパウダー、クミン、ターメリック、ガラムマサラ、こしょう、おろしにんにく、おろししょうが)とヨーグルトを加えてもみこみ、30分ほどおく。研いだ米にこれを加え、炊飯器で炊き上げる。炊きあがったらギーを加え(米3合なら、ギーは大さじ3)、混ぜ合わせる。

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とうもろこし(生)は、包丁で実を切り落とし、塩(米3合に対し、小さじ11/2)とともに、研いだ米に加え、炊飯器で炊き上げる。炊きあがったらギーを加え(米3合なら、ギーは大さじ3)、混ぜ合わせる。

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インドの米料理「ビリアニ」をヒントに、炊き込みご飯を作りました。といっても、具材を入れて炊き上げ、炊きあがったあとでギーを加えて混ぜ合わせたので、ビリヤニというよりプラオに近いかもしれません。米は、バスマティが手に入らなかったため日本米を使用し、水を少なめにして硬めに炊き上げました。

鶏肉にまぶしたスパイス類が、最後に合わせたギーとよく合いました。ギーってスパイスと相性いいんだなぁと改めて思います。一方のとうもろこし。これは塩だけで味つけしましたが、こちらもギーと好相性。考えてみれば、バターライスととうもろこしって文句なしに合います。そんなバターライスと比べてみれば、ギーライスのほうがさっぱりして、食べ飽きない味という印象でした。

◎フレンチトースト風 ギートースト/食ラボ作
食パン(6枚切り)を1/4の大きさに切る。牛乳にグラニュー糖、カスタードパウダー、シナモンパウダーを加えてよく混ぜ合わせたら、バットに並べた食パンにかけ、よく浸み込ませる。ギーを熱したフライパンで、両面香ばしく焼く。

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おなじみのフレンチトースト。卵の代わりにカスタードパウダーを使うことで、パンの漬け込み時間が短くてすみ(30~40分程度)、バターの替わりにギーを使って焼くというもの。
こちらもやはり、バターよりギーのほうが軽く仕上がりました。

スパイス好きにとっては、スパイスをより強めにし(シナモン以外に、カルダモンその他のスパイスも加える)、ギーで焼いた方が合う気がしましたが、
バターが薫る、オーソドックスなフレンチトーストが好みの人にとっては、ギーでは少し物足りなく感じるかもしれません。

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“油の研究”の6回目。今回は、今にわかに注目され始めた「ギー」をとりあげました。ギーという名前を聞いたことがある人でも、
それがバターから作られるオイルだと知らない人も多いと思います。さらに、ギーになった時点で、バターとは違う脂肪酸に変わること。
そのギーの脂肪酸が、健康にも脳にもよく、脂肪がついにくい「中鎖脂肪酸」であることは、新鮮な情報でした。

そんなギーは、バターを煮詰めて漉すことで、家庭でも簡単にできることがわかりました。最近は瓶入りなどの商品も市販されていますが、酸化しにくく加熱にも強いオイルであること。
常温で長期保存も可能なので、ぜひご家庭でも使ってみてはいかがでしょうか。