油の研究3

『身近な調味料をもっとよく知り、おいしく使おう!』

「食のラボラトリー」は、普段からおなじみの食材や調味料をもっとよく知り、おいしい使い方を研究しようという思いから始まりました。その第1弾が“塩の研究会”。塩そのものの味を比較したリ、調理してみると、新しい発見がいっぱいありました。そこで、「塩」に続き、さまざまな調味料を研究することになりました。
これまでとりあげたのは、「砂糖」「みりん」「酒(料理用)」「酢」など。さらに昨年は1年間にわたってさまざまな「だし」をとりあげました。そして、今年のテーマは「油」。さまざまな油について研究していく予定です。
3回目は、再び植物油脂にもどり、ごま油とピーナッツ油をとりあげました。

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<ごま油>

◉日本で消費されるごまの99.9%は輸入ごま
ごまの発祥地は熱帯アフリカのサバンナ地域といわれています。高温(25~35℃)で日照時間の長い地域でないと育ちにくいため、主にアフリカ、中近東、東南アジア、南米、中南米などの暑い国々で栽培されています。種子の外皮の色によって「白ごま」「茶ごま」「黒ごま」「金ごま」に分かれます。 白ごま、茶ごまは各地で栽培され、黒ごまは主にアジア地域、金ごまは主にトルコで栽培されています。国産のごまの生産量は年間で200t程度。国内で消費されるごま(ごま油や食用のごまの原料)のたった1%。残りの99.9%は輸入に頼るしかなく、日本は中国に次いで世界第2位のごま輸入国です。

◉抗酸化物質のゴマリグナンが含まれる
ごまの成分は5割が油分、2割がたんぱく質、残り3割がビタミン類、ミネラル、食物繊維です。ごまの油分は、主に不飽和脂肪酸であるリノール酸とオレイン酸で構成されています。不飽和脂肪酸は、人に必要な脂肪酸(=必須脂肪酸)ですが、体内で作ることができないため、食品から摂取しなければなりません。このうちリノール酸は細胞膜を作り、血中の悪玉コレステロールを排出します。オレイン酸は大腸で便の滑りをよくして便秘を予防し、善玉コレステロールを減らさずに悪玉コレステロールを減らします。
さらに、ごまには「ゴマリグナン」という抗酸化物質が含まれています。脂質の酸化を防ぐ働きがあるため、ごま油自体の酸化を抑えたり、有害な活性酸素の働きを抑えるため、ごま油をとることによって老化防止にも役立ちます。ゴマリグナンには、セサミン、セサモリン、セサミノール、セサモール、エピセサミン等が含まれています。体内の活性酸素の8割は肝臓で発生するといわれますが、セサミンは脂肪燃焼を促進し、肝機能の働きを活性化する代表物質。アルコールの解毒を助けたり、高血圧を改善する作用もあります。

ごまの種子を搾って作るごま油
ごま油の原料は、ごまの種子。種子をそのまま搾るか、加熱&焙煎して搾りますが、この焙煎温度と焙煎時間によって、異なる風味や香りを引き出します。焙煎の工程は、ごまの状態やその日の天候によっても左右されるといわれ、経験豊かな職人技が決め手になる大変難しい作業です。

<焙煎しないごま油>
白ごまを、焙煎せずに生のまま搾ったのが“太白”といわれるタイプ。焙煎しないため、ごま独特の風味はほとんどありませんが、ごまのアクやエグミを抑え、ごま自体のうまみが凝縮したさらっと上品な味です。香りが目立たないためサラダ油代わりに使え、和食をはじめ、どんな料理にも合います。
※太白 中国語の意味は「金星」「宵の明星」。ここから付けられたようです。

<焙煎するごま油>
白ごまを低温で時間をかけて焙煎することで、味、香りともやわらかで甘い香りをもつ薄口タイプと、高温で強く焙煎することで、深いコクと香ばしい香りを引き出した濃口タイプがあります。
このほか、白ごまに黒ごまをブレンドしたタイプや、黒ごまだけを高温で深煎りして搾ったタイプも。後者は中華料理などで蒸した肉や魚にふりかけて香味づけに使われる「黒ごま油」がこのタイプです。
※参考、出典:「岩井の胡麻油」「山田製油」「九鬼産業」HPなど

<ピーナッツ油>

◉高熱に強く、酸化しにくい植物油
ピーナッツ(落花生)の実を搾った油。ピーナッツの原産地は南アメリカや西インドですが、世界中の熱帯や亜熱帯地域で栽培されています。その実は古くから食用にされ、栽培もされていましたが、実から油を抽出した歴史は浅く、19世紀前半から始まったとされます。
オリーブオイルよりは安価にできることから代替品として使われたこともあります。また、植物性油脂の中では高温に強く(220℃までOK)、加熱しても酸化しにくいのが特徴です。

◉ビタミンE、レスベラトロールが豊富
ピーナッツにはビタミンEが豊富。ビタミンEは高い抗酸化作用をもち、老化を予防する効果があります。また、血行をよくして冷え症や肌のシミを防ぎ、ホルモンバランスを整える効果も期待できます。また、同じく抗酸化作用のある「レスベラトロール(ポリフェノールの一種)」や、不飽和脂肪酸のオレイン酸やリノール酸も含まれています。
ただし、ピーナッツは“ときに命にかかわる重篤な症状を引き起こすとして、必ず表示が定められている”「7大アレルギー食品の1つ」のため、注意が必要です。

◉中華料理店で使われるのはピーナッツ油、白絞油
ピーナッツ油は、高温での炒め物や揚げ物に適するため、香港などの中華料理ではよく使われています。ただ、日本では価格が高いため、高級店で使われる程度。通常の中華店で使われる油は、安価な白絞油(しらしめゆ)が多いそうです。白絞油は、淡黄色になるまで精製した油のこと。当初の原料は菜種でしたが、最近は大豆、綿実、ごまから搾ったものも多く出回っています。
白絞油の特徴は、炒め物や揚げ物などの加熱に向くこと。というより、精製工程で“脱ロウ”をしていないため、温度が低いと油が濁ったりくもったりしてしまい、加熱にしか向かない油です。

◉白絞油は、サラダ油と成分がほぼ同じ
これと原料がほぼ同じなのが、サラダ油。サラダ油は白絞油をさらに精製して、名前どおりサラッとして、サラダのドレッシング用に生でも使えるよう、濁りやくもりの原因となる脂部分(ロウ)を除去したもの。0~10℃で10~45時間冷却して分離させ、ロウの成分を除去するため、無味無臭の油です。

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<ごま油、ピーナッツ油を用いた料理づくり>
それぞれのごま油とピーナッツ油を試飲したのち、それらを使った料理を作り、みんなでいただきました。

◎鶏肉としょうがのスープ煮 黒ごま油風味/久保田作
たっぷりのしょうがを黒ごま油で炒めて香りを出し、鶏モモ肉、純米酒、なつめも加えてじっくり煮込んだもの。台湾などでは昔からおなじみの料理で、疲労回復スープ。産後の主婦に飲ませたりすると効果抜群だとか。

鶏モモ肉は骨付きのぶつ切り肉を使用(4~5人前1.2㎏程度)。肉は先にサッとゆがいてアクを取っておく。しょうがはせん切り。鍋に黒ごま油としょうがを入れ、弱火でじっくり炒め、香りが出たら、しょうがは焦げないよういったん取り出す。鶏肉を入れて焼き色をつけたらしょうがを戻し、純米酒500㏄を加えて強火で煮る。煮立ったら水をひたひたになるまで加え、弱火にし、フタをして30分ほど煮込む(途中、水が足りなくなったら水をさす)。最後に塩で味を調え、最後に再び黒ごま油を香りづけに加える。器に盛って香菜を添える。

黒ごまだけを搾った黒ごま油は、日本ではあまりなじみがありませんが、中国や台湾では炒め物や蒸し物の香味づけに用いたり、この料理のように煮込みに用いたりするそうです。骨付き鶏肉に黒ごま油の風味が加わり、栄養も豊富で、うまみたっぷりのスープになりました。

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◎白身魚の豚肉・ねぎのせ蒸し  ごま油風味/長島作

白身魚(今回は真だらを使用。ほかに銀だらなど)の切り身に、ごま油(濃口)であえた豚薄切り肉と長ねぎをのせ、蒸し上げたもの。魚の切り身には酒塩をしておく。豚肉は細切りにし、長ねぎは斜め薄切り。しょうがはせん切り、豆鼓はみじん切りにする。豚肉、長ねぎ、しょうが、豆鼓をごま油(濃口)としょうゆ、酒、砂糖、塩であえる。魚を皿にのせ、上に調味料であえた豚肉と長ねぎをのせ、強火で10分程蒸し上げる。

「魚の上に、香味野菜とともに豚肉をのせることで、さっぱりした魚に、肉の脂のコクと、ごま油の風味が加わるんです」と長島さん。豚肉はバラ肉や肩ロースなどの部位がいいそうです。

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◎うるい、大根、はるかの黒ごま風味あえ/長島作
うるいはサッとゆで、3~4㎝長さに切る。大根も3~4㎝長さのせん切りにし、塩をしてしばらくおいてから水けをしっかりしぼる。はるか(柑橘)は、実を取り出し、1/3程度はくずして汁もとっておく。はるかの汁、白すりごま、塩、黒ごま油を混ぜ合わせ、酸味が足りないようなら酢を足し、うるいと大根、残ったはるかの実をあえる。

「柑橘ははるか、せとかのように、あまり甘みが強くないものがおすすめですね」。山菜の“うるい”と、控えめな甘みと酸味の“はるか”が、春の訪れを感じさせるあえもの。ごま油の風味によって、味にコクが加わりました。

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◎ターサイのピーナッツ油炒め    久保田作
ピーナッツ油を用いた、シンプルな青菜炒め。中華鍋にピーナッツ油とにんにく(薄切り)、塩を入れて弱火で熱し、香りが立ったらザク切りにしたターサイを加え、強火で一気に炒め合わせる。「ターサイは、水切りせずに加えることもポイント。加えたら最後は強火でザッザツと炒めましょう」と久保田さん。「台湾の家庭では、先に青菜を中華鍋にピーナッツ油と薄切りにしたにんにくを入れて弱火で熱し、にんにくの香りが油にうつったら大きめのボウルに入れ、サッとゆがいた青菜と塩を加え、ボウルの中で一気にあえたりもしますね」

ピーナッツ油は、普段、日本の家庭ではなかなか使う機会がありませんが、青菜の炒め物で比べてみると、仕上がりが軽いイメージ。ふわっと香ばしい風味も加わって、シンプルな炒め物が引き立ちました。

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◎にらまんじゅう 台湾家庭風/久保田作
薄力粉と強力粉を半々でボウルに入れ、熱湯を少しずつ加えながら混ぜてこね、耳たぶ程度の硬さになったら、そのまま30分程度寝かせる。硬めの炒り卵を作る。にら、戻した春雨はそれぞれ粗みじんに切り、炒り卵、塩少々とともにごま油(濃口)であえる。この具を寝かせておいた皮で包み込み、太白ごま油で焼く。「今日は、具に炒り卵を加えましたが、台湾の家庭やお店によっては、硬めの炒り豆腐を入れるところも多いですよ」と久保田さん。

風味の強いごま油は具をあえるときに使い、焼くときは太白ごま油で、というのもポイント。さらに、焼き色がついてふっくら焼き上がったら、熱々のところをすぐさま食べるのもポイントですね。
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“油の研究”の3回目。再び植物油に戻り、ごま油とピーナッツ油をとりあげました。ごま油は日本の家庭料理でもおなじみですが、案外知らなかったのが、日本で使用されているごまの99.9%が輸入ごまだということでした。
また、日本で出回っているごま油は、白ごまを用いたものがほとんどですが、今回は、中華料理などでは使われている、黒ごまだけを用いた「黒ごま油」も取り寄せ、そのコクや風味を比較することができました。
ピーナッツ油も日本ではあまり出回らない油ですが、加熱にも強く、炒めたり揚げたりすると、実に軽く仕上がります。とてもいい油だと思うのですが、なかなか一般に普及しないのは、ピーナッツが7大アレルギー食品の1つということも関係しているのかもしれません。

<今日のおやつ>

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