発酵、発酵食の研究3

『発酵、発酵食をもっと知ろう、おいしく使おう!』

今年は「発酵、発酵食」がテーマ。さまざまな角度から“発酵や発酵食品”そして“発酵食品を使った料理”を研究しています。

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今年はさまざまな角度から“発酵”や“発酵食材・食品を使った料理”を研究しています。3回目は、先月に続いて「みそ」を取り上げ、みその種類や、日本各地のみその違いや特徴を学び、みそを使った料理を作りました。

今日試食したみそは、麦みそです。また、「日本各地のご当地汁」シリーズの2回目は“大分のだんご汁”にスポットをあて、その汁ができた背景や気候風土などを学んだのち、実際にみんなで作って試食しました。

<みその種類>
◎米みそ、麦みそ、豆みそ、の3種類
基本は「米みそ」「麦みそ」「豆みそ」の3種類ですが、この3種類のみそを2種類以上混合した味噌のことを「調合みそ」と呼びます。

米みそ
生産量は日本全体の約8割を占め、北海道から沖縄まで広い範囲でつくられているみそ。蒸煮(じょうしゃ)した大豆に米麹と塩を加え、発酵、熟成させてつくられます。
大豆や米麹の比率の違い、塩加減や熟成期間の違いにより、辛口、甘口、甘みそまで、風味や色の違うみそができあがります。

麦みそ
九州を中心に、広島、山口、愛媛など瀬戸内海沿岸でつくられているみそ。蒸煮(じょうしゃ)した大豆に麦麹と塩を加え、発酵、熟成させてつくられます。まろやかな甘口のみそが多いが、中には辛口みそもあります。

豆みそ
愛知、三重、岐阜の東海地方でつくられているみそ。蒸煮(じょうしゃ)した大豆に、豆麹と塩を加え、発酵、熟成させてつくられます。熟成期間が3年前後と非常に長く、大豆だけを原料とするため、独特の風味とうまみがあります。

<日本各地のみそ>
図1
引用:「HIKARI MISO」HP、みそ健康づくり委員会「みそを知る」

◎米みそ      引用:農林水産省「お国自慢みそマップ」
図2
図3
図4

◎麦みそ
図4

◎豆みそ
図5

◎赤みそと白みそは、“見た目”の違いから
赤みそは見た目の色が赤いもの、白みそは見た目の色が白っぽいものをいいますが、大豆を用いてつくるという、基本原料はどちらも同じです。色の違いが生じるのは、
発酵の際、大豆のアミノ酸が糖と反応して褐色に変化する現象「メイラード反応」が起きるからです。

赤くなるのは、大豆の浸水時間を長くし、高温で長時間蒸すことでたんぱく質が変性し、酵素によって分解が促進されると、色が濃くなり、赤みそになります。
一方、大豆の浸水時間を短くし、大豆を(蒸さずに)煮たのち、保温しながら短期間で熟成させる等の方法によってメイラード反応を抑えることで、淡い色の白みそになります。
※白みその場合、このほかにも、高い精白度で精米する、脱皮した大豆を使う、煮た後は煮汁を取り除く、着色の少ない麹を用いる…等の工夫で白く仕上げています。

◎赤みそは辛口、白みそは甘口が多いが、例外もある
一般的に、赤みそは“辛口”、白みそは“甘口”といわれますが、それはまず、使用する塩分量が違うからです。赤みそに使用する塩分は11~13%が多いため辛口に、白みそは5~7%が多いため甘口になるといわれています。
ただ、同じ塩分量であっても、原料の麹の比率(麹歩合)が高いと、発酵によって糖類が多くつくられるため、甘さが増します。
また、赤みその中にも、塩分が5~7%(白みそ並み)のものや、塩分は11~13%であっても、麹歩合が高いため“甘口”になるみそもあります。

◎信州みそは白みそ? 赤だしは赤みそ?
出荷量のシェア46%(全国1 位)を誇る信州みそは、どちらかといえば白っぽい色のイメージがありますが、総じて辛口が多く、甘口のイメ-ジの強い白みそとは違います。
そこで、信州みそのメーカーのHPなどでは、“淡色みそ“と表記しているものが多いようです。

また、赤みそと混同されやすいものに、“赤だし”があります。“赤だし”は、もともと中京地方(愛知、三重、岐阜)の豆みそで仕立てたみそ汁のことをこう呼んでいました。
その後、豆みそに米みそを混合した「調合みそ」で仕立てたみそ汁を“赤だし”と呼んだり、「調合みそ」の商品名にこの名がつけられるようにもなりました。

<今月のご当地みそ汁>
◎だんご汁(大分)
大分で昔から食べられてきた郷土汁に「だんご汁」があります。いりこでとっただし汁に、小麦粉でつくっただんごやさまざまな野菜を入れた、みそ仕立ての具だくさん汁です。
米が貴重だった時代、だんご汁は夕食としても食べられていたとか。

だんごは、粉に塩と水を混ぜてこね、寝かせておいたものを、指でのばしながら入れて煮込みますが、その形は地域によって、家庭によっても違うようです。大分県のHPにも次の記述があります。
『手で握った形の“にぎにぎだんご”、ちゃんとこねたりのばしたりしない“びっちょだんご”等もあった。忙しくて時間がない時は、寝かせずにのばしたり、水を多くしてゆるく溶いて、箸やお玉で掬い上げて汁の中に落としたりもした』と、実に楽しく描かれています。

だんごに使う粉も、中力粉だったり、薄力粉と強力粉を混ぜたり、そば粉、米粉、もち米粉、かんころ粉・・・など、こちらも地域や家庭によってさまざまな様子。
また、だんご以外の具は主に野菜ですが、近年は豚肉や鶏肉などの肉類を入れるだんご汁も多くなっているようです。

<みそで料理を作る>
麦みそ6 種を各自で試食したのち、麦みそを使った料理を作りました。

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上段左から 大分「九州そだち麦」/長崎「麦の波」/鹿児島「麦みそ」
下段左から 広島「麦味噌」/愛媛「麦南予」/沖縄(宮古島)「宮古みそ」

◎豚肉のみそ焼き/長島作
材料(4 人分):豚ロース(しょうが焼き用)肉350g、長ネギ1 本、糸唐辛子適宜、みそ床
(麦みそ70~90g、甘酒100~120 ㏄)、ごま油、塩各適量、ガーゼ

作り方
下準備:麦みそと甘酒を混ぜ合わせてみそ床を作る。バットにみそ床を敷き、ガーゼを広げてのせ、肉を並べる。さらにガーゼをのせ、みそ床を敷き、肉を並べる。
この順で行い、肉を漬け込む(1 時間程度)。長ネギは斜め切りにし、水に放したのちザルに上げ、水気をとっておく。
※ガーゼがない場合は、ジップ袋にみそ床と肉を入れ、漬け込んでもいいが、焼くときは、みそをぬぐって焼く。みそが付いたまま焼くと、すぐに焦げてしまう。
①漬け床から肉を取り出し、フライパン(油をひかず)で両面を焼く。弱火でゆっくり、火を通し、器に盛る。
②長ネギをごま油、塩、糸唐辛子であえ、①の上にのせる。

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「みそ床の材料は麦みそと甘酒だけ。みりん等を加えなくても、麦みそや甘酒の自然の甘さで充分ですよ。また、甘酒の麹の作用で、肉もやわらかくなるんです」と、長島さん。
“肉のみそ漬け”というと、漬け込む時間がかかりそうなイメージがありますが、薄切り肉に替えると短時間でOK。シンプルに焼くだけでおいしく、しかも、肉がやわらかいこと!
冷めてもかたくなりにくいので、お弁当等にもおすすめですね。

◎サニーレタスとあさりの酢みそあえ/久保田作
「本来は、チシャを酢みそであえる広島、岡山、山口地方の郷土料理ですが、手に入りやすいサニーレタスを用い、あさりも加えて作りました。また、あえ衣はからし酢みそにしましたが、からしを加えるのはお好みで」と久保田さん。

材料(4 人分):サニーレタス1/2 わ、あさり(水煮缶)1 缶、A(麦みそ50g、砂糖、酢各大さじ11/2、練りがらし小さじ1/2)
作り方
①Aの材料を混ぜ合わせ、なめらかな酢みそを作る。
②サニーレタスは一口大にちぎる。塩でもみ、水洗いしてから水気をしっかりしぼる。
汁気をきったあさりとともに、①であえる。

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広島出身の久保田さんにとって、酢みそといえば、麦みそで作ったあえ衣だそうです。
西京みそ(白みそ)で作る酢みそより、さっぱりした甘みになるので、昔はお父さん方
が、よくお酒のつまみにしていた、というのもわかる気がします。

◎今月のご当地みそ汁 大分の「だんご汁」& “だんご”で作るご当地おやつ「やせうま」/久保田作
「だんご汁」は、大分県のサイトにある作り方を参考にして作りました。サイトに
ある具材の肉は豚肉となっていましたが、この日はほかに豚肉料理を作るため、だんご汁用は鶏肉に変更しました。
※参照:大分県HP (次代に残したい大分の郷土料理レシピ集)

「やせうま」は、だんご汁用の“だんご”にきな粉や砂糖をまぶし、きな粉もち風にして食べるおやつ。だんご汁を作ったついでに、ご当地おやつも作ります。
材料(9人分)
小麦粉(中力粉)750g、塩大さじ11/3、水、だし汁(いりこ・昆布)適宜、大根15㎝位、にんじん11/2 本、ごぼう11/2本、里芋5個、干ししいたけ小4個、鶏モモ肉1 枚(約250g)、
小ねぎ適宜、麦みそ190g、きな粉、黒砂糖(または砂糖)

作り方
下準備
・粉に塩を混ぜ、水を少しずつ加えながら、好みのやわらかさになるまでこね、丸くまとめてラップで包み、1 時間ほど寝かせる。 ※この日は、水405ccを加え、
耳たぶ程度のやわらかさにしました。
・里芋は皮をむき、7~8mm厚さに切る。ごぼうはささがきにし、水にさらす。にんじんは皮をむき、半月切り、大根は皮をむき、いちょう切り、小ねぎは小口切りにする。干ししいたけはもどしておく。鶏肉は食べやすい大きさに切る。
①昆布といりこでだし汁をとり、野菜類と肉を火にかけ、途中、アクを取りながら中火で煮る。野菜類や肉に火が通ったら、みその半量を加えて溶かす。
②寝かせておいただんごをちぎり、手で丸めたあと、ひっぱって平たく伸ばし、太くて短い麺状にする。長さも形も不揃いでOK。
※作っただんごの一部は、「やせうま」用に残しておく。
③②を①の鍋に入れていく。だんごに火が通り、煮汁の味がしみたら、残りのみそを加えて味を調える。器に盛り、小ねぎを散らす。
④②で残しただんごを熱湯でゆで、きな粉と黒砂糖を半々で混ぜてまぶし、「やせうま」を作る。

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「だんご汁」といっても、だんごのように丸めるのではなく、手でちぎって、平たく伸ばすので、太くて短い麺かパスタのよう。岩手の「ひっつみ汁」にも似ている気がします。
きっと、平たくした方が火の通りも速く、味もしみこみやすいのでしょう。

「だんご汁には、やっぱり麦みそが合うと思いますよ」と、久保田さんも言うように、煮込んだだんごが甘めの麦みその味としっくり合って、あとをひくおいしさ。さまざまな野菜と一緒に煮込むので、
具だくさんでボリュームたっぷり。昔、主食代わりに食べられていたというのもうなづけました。

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テーマ「発酵、発酵食の研究」の3 回目は、「みそ」をとりあげました。日本各地のみその違いや、米みそ、麦みそ、豆みその違い、赤みそと白みその違い・・・などを学んだあと、今回は麦みそを使った料理を試作、試食しました。

そして、今月のご当地みそ汁は「だんご汁」。大分を中心にした九州地方で昔から食べられてきました。だんごの大きさも形も野菜も、家それぞれ。自由におおらかに作って食べられてきた故郷の味は、そのまま“我が家の味”でした。