その他の甘味料の研究

『身近な調味料をもっとよく知り、おいしく使おう!』

もともと「食のラボラトリー」は、普段からおなじみの食材や調味料をもっとよく知り、おいしい使い方を研究しようという思いから始まりました。そしてその第1弾が“塩の研究会”。塩そのものの味を比較したリ、調理してみると、新しい発見がいっぱいありました。そこで、今年は塩に続いて、さまざまな調味料を研究することにしました。

3.その他の甘味料の研究
砂糖、みりんに続き、今月はその他の甘味料をとりあげます。近年は砂糖以外の甘味料が次々と開発され、注目されています。これらの開発が活発化している背景には、糖尿病などの病気で糖分コントロールを余儀なくされている人や、深刻な肥満に悩む人が世界中に増え続けている傾向があります。そこで食ラボでも、これらの甘味料について学び、実際に味をみたり、料理に使ってみることにしました。

 

その前にまず、糖分表示について改めてみんなで勉強しました。知っているつもりで正確に知らなかったり、勘違いしていたり、イメージで捉えていることも多いのがこれらの表示です。中でも、勘違いしやすいのが「0カロリー、ノンカロリー,ゼロ、レス、フリー」の表示。これは食品100gあたり(あるいは飲料100mlあたり)0.5g未満という基準を満たしていれば表示してもよいため、完全には0でないことも多いのです。さらに「ダイエット、カット、ライト、低、ひかえめ」の表示になると、食品100gあたり5g以下、あるいは飲料100mlあたり2.5g以下となり、糖分の基準値はいっそうゆるくなります。そして、間違えやすいのが「シュガーレス、砂糖不使用」の表示。これは加工時に砂糖を使用しなければ、加工前の食品に砂糖が含まれていても表示できることや、果汁その他の甘みが加えられていても表示できます。しかも、基準値が決まっていないため、実際のカロリーがどのくらいなのか、気になるところです。

それでは、今日のテーマである“その他の甘味料”。
砂糖でもみりんでもない甘味料と聞いただけで否定的に思ってしまう人も多いのではないでしょうか。食ラボメンバーもそうでした。というのも、これらの甘味料は保存料や着色料などと同様の“食品添加物”に分類されるため、“自然(ナチュラル)ではないもの”というレッテルを貼られ、「そんなもの使って、ほんとに安全だろうか?」という意識が芽生えてしまうことも原因です。また、かつては使用が許されていたのに、その後発がん性のあることが判明して禁止された“人工甘味料”の「チクロ」。そのマイナスイメージを今でも引きずっているように思います。けれども、このチクロの一件があったからこそ、その後、植物の葉や果実に含まれる甘味成分を抽出した“天然甘味料”の開発や研究が活発化したことも確かです。そして研究・開発された天然甘味料の中には、虫歯になりにくい、血糖値を上げない、腸内環境を改善する・・・等の薬効が確認されているものもあり、単に砂糖の代替品というだけでなくなってきました。

よく見かける天然甘味料には、ビーツや乳糖その他から抽出される「オリゴ糖」をはじめ、きのこ類や酵母に含まれる天然の糖類から抽出した「トレハロース」、白樺などの樹木を原料にした「キシリトール」などがおなじみです。オリゴ糖は血糖値を上げず、整腸作用があることでも知られ、サプリメントにもなっているほか、トレハロース、キシリトールとともに虫歯になりにくいことでも知られ、パンや菓子類、ガム、キャンディー類にも積極的に使われています。このほか、甘草の根茎からつくり出した「グリチルリシン」は甘さが砂糖の200倍以上もあり、抗アレルギー作用などの薬効もあることから、みそやしょうゆなどの食品や、漢方薬にも使用されています。さらに、注目の「ステビア」になると、甘さは砂糖の300~400倍。もともとパラグアイ原産のキク科の薬草が原料で、安全性も高く、今やさまざまな清涼飲料水や加工品にひっぱりだこです。「ステビア」の場合、それだけ甘いにもかかわらず、血糖値を上げないため、糖尿病の人にも安心して使えるうえ、C型肝炎ウィルスを抑制させる働きや、ヒスタミン食中毒の解毒作用もあり、近年は医療用にも積極的に活用され始めています。

 

今回、食ラボでは、これらの天然甘味料の中から「ステビア」に注目し、その味をみた後で料理にも使ってみました。

◎水溶液を試飲 
水400㏄でステビア7%品1.12gを溶き、0.28%水溶液にしたものを試飲しました。
※ステビア7%品・・・デキストリンで調整し、砂糖の25倍の甘さに抑えたもの
※デキストリン・・・じゃが芋やとうもろこしからつくられる炭水化物
試飲後の食ラボメンバーの感想は次の通りです。
・砂糖と比べると、いきなりストレートに甘みがこない。
・少しあとから甘さを感じる。
・すっきりとした甘み。
・もわ~んとした甘さを感じる。
・砂糖とは違う甘みだが、十分甘い。
・飲んでいるときはほとんどわからないが、後味に多少苦みを感じる。
・いやな甘さではないので、糖尿病などで砂糖を制限されている人には助かると思う。

◎「すし飯」をつくり、比較
※①は通常のすし飯の材料、②は砂糖をみりんに置き替え、③は砂糖をステビアに置き替えて
つくりました。砂糖大さじ1=9g
※みりんは、砂糖の3倍量で同じ甘さになるものとして計算。みりん大さじ1=18g
※ステビア7%品は、砂糖の25分の1で同じ甘さになるものとして計算。13.5×1/25=0.54g
①米2合、酢1/4カップ、塩小さじ1強、砂糖大さじ1+1/2(13.5g)   
②米2合、酢1/4カップ、塩小さじ1強、みりん大さじ4+1/2(81g) 
③米2合、酢1/4カップ、塩小さじ1強、ステビア7%品(25倍のもの) 0.54g

すし飯3種

 

 

 

 

 

 

試食後の食ラボメンバーの感想は次の通りです。

②(砂糖をみりんに置き替えた場合)
 ・ご飯につやが出て、ピカピカしている。
 ・ご飯の色は、みりん(三河みりん使用)の色の影響で多少黄色っぽくなっている。
 ・酸味も塩気も甘みも今ひとつで、メリハリがない。
③(砂糖をステビアに置き替えた場合)
 ・ご飯の色が白くてきれい。
 ・さっぱりした甘み。食べたあとに苦みは感じられない。
 ・ステビアの量があまりに少ないので、大丈夫かと心配したが、味はちゃんとついた。
 ・ただし、酢の酸味がいきてこないのと、うまみが足りない。
 ・すし飯の味や硬さが、時間がたつとどうなるのか心配。
時間経過とともに苦みが出ることはないのかどうかも知りたい。

◎「牛肉のしぐれ煮」をつくり、比較
※①は通常の牛肉しぐれ煮の材料、②は砂糖をみりんに置き替え、③は砂糖をステビアに置き替えてつくりました。
さらに②③の場合、みりん大さじ1、酒大さじ1はそのまま用い、砂糖の部分だけを置き替えています。

しぐれ煮調理

しぐれ煮1

①牛肉260g、ごぼう125g、だし汁1カップ、しょうゆ大さじ3+1/2、みりん大さじ1、酒大さじ1、
砂糖大さじ3+1/2(31.5g)   
②牛肉260g、ごぼう125g、だし汁1カップ、しょうゆ大さじ3+1/2、みりん大さじ1、酒大さじ1、
みりん大さじ10+1/2(189g) 
③牛肉260g、ごぼう125g、だし汁1カップ、しょうゆ大さじ3+1/2、みりん大さじ1、酒大さじ1、
ステビア7%品(25倍のもの)1.26g

調理1

お寿司3種

試食後の食ラボメンバーの感想は次の通りです。
②(砂糖をみりんに置き替えた場合)
 ・みりんだけあって、“照り”はさすがにきれい。
 ・2月に、里芋をみりんだけで煮た時は、芋のまわりがかたくなってしまい、味は入らなかったが、今回の肉の場合、味はしっかりしみこんでいると思う。
 ・うまみが強い。ただ、少々しつこいから飽きそう。
 ・みりんが多いものは、ほかに比べ、アクが非常に多く出た。
 ・煮ることでアルコールが半分程度とんだとして計算しても、みりんのカロリーは想像以上に高いことがわかった。
  それを知ると、砂糖をみりんと置き替えるのは怖い。しかも2~3人分の煮物で、一度にみりんを200g近く使うのは不経済。

③(砂糖をステビアに置き替えた場合)
 ・煮上がった色がほかと比べると、多少白っぽく、そっけない印象。
 ・砂糖としょうゆの甘じょっぱい味に比べると、さらっとした味に仕上がる。
 ・あと味がさっぱりしている。むしろ通常のしぐれ煮よりこちらのほうが好みかも・・・。
 ・いつもの甘じょっぱい味に比べ、私は何か物足りない気がする。
 ・濃い味付けや、しつこい味つけの料理に、ステビアは向いているかもしれない。

今回の調理比較の成果は、昔から料理に使用されてきた砂糖やみりんと、最近注目の甘味料ステビアを用いた場合の味の比較です。水溶液を飲んだ場合は、砂糖の水溶液とはやはり違う味わいで、後味に多少の違和感(苦み)も残ったのですが、すし飯や牛肉のしぐれ煮に使用した場合は、感じられませんでした。とくに濃いめの味つけにした場合、味に違いは感じられましたが、人によっては砂糖やみりん使用のものより好みだという意見も出ました。
今まで“甘味料”と聞くだけで頭から否定的だった人も、その作り方や原料を正しく知ると、食ラボメンバー同様、甘味料についての見方が変わるかもしれません。最近の甘味料の多くが、砂糖などと同じ天然の植物から作られていることや、血糖値を上げない、虫歯になりにくい・・・など、砂糖にはなかった利点も多く、医療用にも注目されているほどです。ステビアの場合、今はまだ各企業が飲料や加工品に使用しているだけで、家庭向けには市販されていませんが、確実に安全でそして料理に使ってもおいしければ、今後は家庭でも使ってみたいという声は高まるのではないかと思いました。
食ラボでは今後、こういった新しい情報にも目を向け、率先して試していきたいと思っています。