食ラボおやつ②  キャレ・アルザシアン

◎食ラボおやつとは・・・

月に一度、食ラボ研究員が集まる日、研究後のブレイクタイムにいただく軽いおやつのこと。新顔の旬の果物、郷土菓子、珍しいスイーツなどの中から、評判のよかったものをご紹介していこうと思います。
 

食ラボおやつ②  キャレ・アルザシアン           Carrés  Arsaciens

箱を開けた途端、ふわ~っとバターの香り・・・。1月の食ラボおやつに登場したのは、トモコベーキングスタジオ(食ラボ S研究員)特製の焼き菓子「キャレ・アルザシアン」。もともとはフランス・アルザス地方の郷土菓子で、生地を四角く焼いて、四角く切るから、フランス語の“四角い”という意味の“キャレ”が菓子名に入っています。

 

一番上にキャラメリゼしたローストアーモンドが一面に敷き詰めてあるところは、ちょっとフロランタンに似ていますが、フロランタンがサブレ生地なのに対し、こちらはパイ生地(フィユタージュ=折りパイ)。しかも2層仕立てで、間にはフランボワーズのコンフィチュールがサンドされています。

 

さて、そのパイ生地はといえば、もう見るからにサクッサク。

「焼き菓子といっても、パイ菓子の場合は、できれば作ったその日に食べていただきたいんです」

ということで、Sさんは食ラボ当日、わざわざ朝一番に焼いてきてくれたのです。

 

“焼く”といえば、この焼き加減が実に見事!こんがり焼けた、香ばしい焼き色を見れば、焦げる寸前のぎりぎりのところまでしっかり焼ききっているのがわかります。

 

さっそくみんなでいただくと、サクッ、サクサクッ・・・、幾重にも折り込まれたフィユタージュが、1層1層、はらはらっとくずれながら口の中へ。限界まで焼ききった生地は、力強くもあり、はかなくもあり、これぞパイの醍醐味。そして2層の間のフランボワーズの甘酸っぱさがまたいい。心憎いアクセントになっています。

 

参考までに、Sさんに作り方を聞きました。

フィユタージュ(折りパイ)の生地を2枚作り、微妙に厚い方を下半分用に。こちらをまず220~230℃のオーヴンで完全に焼ききってキャラメリゼし、冷めたら上にコンフィチュール(生のフランボワーズから作った自家製)を一面に塗っておく。

スライスアーモンドは軽くローストする。バター、生クリーム、水あめ等でキャラメル液を作る。上半分用の生地は7割方焼いたところでいったん取り出し、ローストアーモンドを加えたキャラメル液を上一面にのせ、再びオーヴンに入れて焼く。

 

下半分の生地同様、上半分用もしっかり焼ききるのがコツだそうです。もっともむずかしいのは、2枚のパイ生地の焼き上がりをそろえ、取り出すタイミング。経験値で、おおよその焼き時間はわかっていても、その日の生地の状態によって毎回毎回異なるため、機械任せにはせず、必ず自分の目で確認しながら、見極めるのだとか。このあたり、まさに職人技です。

また、上のパイは熱いうちに切らないと切れなくなるので、すぐさま切り分け、その後、もう1枚の生地の上にそれらを並べておいてから、下のパイ生地を切り分けていくのだそうです。なるほど~。

 

「キャレ・アルザシアン」は、マドレーヌやフィナンシェのように誰もが知っている焼き菓子ではありませんし、どちらかといえば見た目も地味。そのわりに、作る手間がかかり、“焼き”の力の差も出やすいので、扱っているお店は案外少ないお菓子です。

また、一般には焼き菓子というと賞味期限は長めですが、「キャレ・アルザシアン」がもっともおいしいのは、厳密にいえば焼き上がった当日。実は、とってもとってもぜいたくな焼き菓子といえそうですね。
 

※「キャレ・アルザシアン」 1箱15個前後入り(縦横各5~6cm、厚2.5cm程度)

1箱以上のオーダーなら受注も可能だそうです。詳しいことはお問い合わせください。

TOMOKO BAKING STUDIO(トモコベーキングスタジオ) www.zutto.biz

 
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