「残したい!伝えたい!日本の味!我が家の味!」⑥

『残したい、伝えたい、日本の味!我が家の味!』

食ラボで研究中の家庭料理シリーズ。
7月は、“夏の麺”をとりあげました。

今回、食ラボ研究員に披露してもらったのは、
①思い出の味やふるさとの味
②我が家の定番の味や人気の味

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「私だけではないと思いますが、昔、子供のころの夏の麺といえば、ごく普通に、麺つゆにつけてつるつるっと食べる冷たい冷麦かそうめん。冷麦の中のピンク色した麺を、妹と取り合ったことも思い出です」というのは岩崎さん。

 

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鴨せいろ

「うちも夏場、冷麦やそうめんをよく食べました。そのほかに主人が鴨好きだったので、鴨が手に入ると“鴨せいろ”もよく作りました。水としょうゆ、みりんを煮立て、薄切りにした鴨を入れてほんの少し煮るだけ。だし汁を使わず、鴨から出るおだしだけで作るつゆです。夏は冷たいそばを、熱いつゆにつけて食べていました」というのは成瀬さん。

「うちは母がそうめん嫌いだったせいか食卓に上ることはなく、冷たいそばや冷やし中華が多かったです。
ただ、父は夏でもあたたかいうどんが好きだったので、母がよく父のために“カレーうどん”を作っていたのを覚えています」というのは鈴木さん。

 

一方、かつてご主人の仕事の関係で、一家で台湾とインドネシアに数年間ずつ住んだことのある久保田さん。
思い出の味は、なんと!台湾の“牛肉麺”と、インドネシアで食べた“ラクサ”だとか。
今回は現地の味さながらに、この2つの麺料理を披露してくれました。

 

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牛肉麺

“牛肉麺(ニョーロウミェン)”は、いわゆる台湾のローカルフード。牛肉の塊をさまざまなスパイスとともに煮込んだ麺料理です。にんにく、しょうが、アジアンエシャロット、八角を炒め、香りが立ったら豆板醤としょうゆ、黒豆みそ(八丁みそで代用)を加えてさらに炒め、スープと肉を加えてじっくり煮込みます。牛肉以外の具は青菜(チンゲン菜や山東菜など)と長ねぎ。

麺はコシの強い拉麺なので、日本の“半田そうめん”がぴったり。ということでこの日も半田そうめんを使用しました。

「牛肉麺を初めて現地で食べたのは、赴任して1週間後でした。当時(1980年頃)はまだこの麺の情報がまったくない時代。店の看板に牛肉麺とあるから、甘じょっぱいスープに薄切りの牛肉がのった姿を想像していたのに、出てきたら大違い。牛肉がゴロンゴロンのってるわ、漢方薬のようなスープの味がするわで、もうびっくり。最初は何この味、どうしよう~と思いました。けれど、まもなく家族全員でこの味にはまってしまい、いろいろな店を食べ歩きました。台湾時代は家で作ることはなかったですが、日本に戻ってからですね。あのなつかしい味が無性に食べたくなって、当時を思い出しながら作るようになったんです」と久保田さん。

 

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ラクサ

そしてもう一つが、マレーシアやシンガポール、インドネシアなどで広く食べられている、ローカルフードの麺料理“ラクサ”。国や地方により、店によりいろいろな味があるそうですが、もっぱら久保田さんが食べていたのは、えびなどのだしにさまざまなハーブやアジアンスパイスが加わり、ココナッツミルクやカレーで味つけたスープが特徴の“カレーラクサ”だそうです。
具はえびの他、ゆで卵、ラクサリーフ(日本では香菜で代用)、麺はライスヌードル(米麺)です。

ここで使うハーブ、スパイス類がこれまたアジアンエスニック。
レモングラス、ルンクワス(タイ料理でいうカー。しょうがによく似たもの)、唐辛子、キャンドルナッツ、アジアンエシャロット、干しエビ、カピ(エビの発酵調味料)・・・など。しかもこれらをすべて石臼に入れてよくすりつぶし、スープに加えるため、さまざまな香りや風味がミックスされ、なんとも複雑で奥深い味わいになるのです。
このラクサを、初めは赴任先のジャカルタ(インドネシア)で知り、よく食べるようになったたという久保田さんですが、その後は旅行で行ったシンガポールで食べることも多かったといいます。さまざまなスパイスが絡み合うラクサは、夏になると急に食べたくなる麺の1つだそうですが、現地と同じハーブやスパイス類は、普段はなかなか手に入らないものも多いため、アジアンフードの店で見つけると迷わず買って冷凍しておき、いつでも作れるようにしておくそうです。
ちなみに麺は、通常はライスヌードル(米麺)を使うそうですが、今回はインドネシアのむかご芋から作った乾燥糸こんにゃく“ぷるんぷあん”を使ってもらいました。コシがあって、まるで麺のような糸こんにゃくは、スープの中にそのまま入れ、もどさずに使えるところも便利。肉じゃがや鍋ものに使うだけでなく、
こんな使い方もおすすめです。

 

次は、我が家の定番&人気の『夏の麺』より。

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冷や汁そうめん

成瀬さんが夏場、自宅で教えているお花のお稽古の日によく作るのが“簡単冷や汁そうめん”。午前と午後のお稽古の合い間にササッと作って食べる、いわゆるまかないの麺料理だそうです。時間短縮のため、冷や汁といっても魚は焼かず、缶詰のサバ缶を活用します。すり鉢にごまを入れてすり、缶詰のサバと、みそを加えてさらによくすり混ぜたら、いったん取り出してアルミホイルに広げ、魚焼きグリルで焼くのがポイント(焼くことで香ばしさが出るから、このひと手間は省きません)。焼いたら再びすり鉢に戻し、だし汁と缶汁を加えてのばし、すり鉢ごと冷蔵庫へ。「朝ここまで準備して冷やしておけば、あとはもうラク。食べるときに木綿豆腐をくずして加え、きゅうり、みょうが、大葉を加えればあっという間にできあがりますよ。たたいた梅干しを少し加えてもおいしいの。これを、ご飯ではなく、もっぱらそうめんにかけて食べます」。忙しい合い間にとる食事は、のどごしのいいところもポイント高いですね。

 

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冷たいおそば

「昔も今も、夏の麺というと、冷たいおそばが多いですね」というのは鈴木さん。お菓子製作や教室の合い間に食べることも多いので、やはりサッと食べられるものになることも多いそうです。「ただ、おそばだけだと栄養的に心配なので、そのときあるものを、できるだけいろいろのせたり添えたりして食べています。きゅうりや大葉、みょうが、梅干し、ごま、大根おろし・・・など。さらに錦糸卵を作ってのせたり、天ぷらや焼き穴子などを添えるときもあります」

 

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鶏肉と長ねぎのそば

同じく、日本そばは我が家の定番の1つ、というのは飯塚家。ふるさと新潟の“へぎそば”を常にストックしてあり、それを鶏肉や長ねぎ入りのかけそばにして食べたり、夏場はさっぱりとざるそばにすることも多いそうです。つゆは、「そば屋の親戚から教わった秘伝の“本かえし”。これをそばつゆに使っています」

 

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トマト冷製パスタそうめん

この“本かえし”を使ったそうめんもおいしいということで、この日は“トマトの冷製パスタ風そうめん”を披露してくれました。本返しとだし汁を合わせたものに、切ったトマトとトマト果汁、オリーブオイルを加え、そうめんとあえるだけ。トマトとオリーブオイル、しょうゆ味のつゆの相性がポイントです。
「“本かえし”は一度にたくさん作って作り置きしておけばもつので、ほかにも天つゆにしたり、肉じゃがに使ったりしていますね」

 

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にらそば

そして飯塚家のもう一つの定番が、中華麺を使ったアツアツの“にらそば”。食べ盛りの息子さんが好きだというので、よく作るそうです。にら、豚ひき肉、長ねぎ、にんにく、中華スープ、そして中華麺(蝦子麺)。中でもにらは、丼一面に浮くくらいた~っぷり入るのでスタミナ満点。夏バテ防止にもよさそうですね。

 

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焼きそば

同じく、蝦子麺を使った焼きそばが定番というのは岩崎さん。「うちの場合、夏場でもむしろ冷たい麺よりこちらのほうが出番は多いと思います。乾燥した麺をゆで、焼き豚(または豚肉)や長ねぎ、にんじん、もやしなどと一緒に炒め、オイスターソースとしょうゆで味つけます。香港焼きそば風ですね。我が家の休日のお昼によく登場します」
「家族みんな麺好きですが、なかでも休日のお昼は麺になることが多い」というのは長島さん。夏場は冷たいそばやうどんの上に山芋や海藻類をのせたり、野菜をのせたり、天ぷらをのせたりすることも多いとか。「でも、パスタになることも多いですよ。つい先日も多数決でパスタに軍配が上がり、なすとアンチョビの冷製パスタを作ったところです」

 

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鶏肉のフォー

暑い時期に、熱くて辛い麺もよく作るそうです。ライスヌードル(米麺)は長島家では必ずストックしてある麺の1つで、これでよく作るのが“鶏肉のフォー”。「まずは鶏ガラでガラスープをとり、ニョクマムで味付けしたスープを作ります。ガラについている身はこそげて具にするほか、ホワイトセロリ、グリーンリーフ、香菜、青ねぎなどの野菜をたっぷりのせ、最後にこしょうをた~っぷりきかせて辛くします。ほかにも、たまたま蒸し鶏を作ったあとに、うまみの出たスープを活用してフォーを作ることもありますね」

 

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ココナッツミルク風味のピり辛肉うどん

今回、もう1品披露してくれたのが、“ココナッツミルク風味のピリ辛肉うどん”。豚肉の薄切りやセロリを炒めたところに豆板醤、チリペッパーを加えて辛みを出し、ココナッツミルクで煮込んで旨味を出し、ナンプラーで味付けしたもの。「細めでコシのあるうどんなら冷凍うどんでもOK。ストックしておけばいつでも作れるから、いざというとき心強いですよ」